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非公式バンクシー展@ベルリン

ストリートアートで有名なバンクシー展に行って来ました。(バンクシーを知らない方は、ウィキペディアの解説をどうぞ。)元々2月末までだったのですが、チケットが高いので迷っているうちに終わってしまいました。が、会期が延長され続けて今や6月半ばまでやっているということなので、とりあえず行きました。閉店しない閉店セールみたいなやり口です。

一体いつまで開催されるのかさっぱりわからないバンクシー展です。今度こそ6月16日で最後と書いてありますが、本当なんでしょうか

このバンクシー展について予習したところ、チケットが週末22ユーロ、平日20ユーロとかなり高く、また展示されている作品のうち、どれがオリジナルでどれがコピー(写真)なのかわかりにくいという点が、批判されている感じでした。

バンクシー自身は、反資本主義でアートの民主化を目指していると言われています。それなのに、バンクシー作品が金儲けの種になっているのはどうなのかということです。そしてバンクシーグッズもけっこうな値段で売られていました(葉書1枚2.5ユーロ)。

バンクシーは、第三者が自分の作品を商利用することを明確に禁じています(ルーザーのみ自由に使っていいそうです)。しかし、事実上著作権フリー状態になっているためか、バンクシー作品はいくらでも二次利用されているように思えます。今回のような非公式なバンクシー展も世界中でよく開催されているようです。そこらへんでバンクシー自身の理念と作品の扱われ方がマッチしていないようですが、取り締まり(= 著作権侵害への権利行使)を強化すると、今度はアートの民主化が実現できなくなりそうです。ジレンマですね。

展示作品のうちオリジナルとコピーの区別がつかない問題については、確かにわかりにくかったです。ただ、バンクシー作品は贋作も多いそうなので、非公式展で本物展示と言われても、本当に本物かどうかはわからないのではと思います。贋作やコピーを含めて、こういう感じがバンクシーの世界かと思いつつ鑑賞するくらいでちょうどいいのかもしれません。

これがあのバンクシーの後ろ姿なのでしょうか……
こういうのは明らかに複製とわかります

更に、FAZの記事「Antikapitalistische Deko für Kapitalisten」は、オープンで既成の枠を破ってメッセージを伝えようとする反体制的なアーティストたち(の作品)は、今回のような美術展によってまた閉じ込められてしまうと批判的です。バンクシーのストリートアートは、周囲の風景やその時の政治情勢なども取り込んで作品として成立することが多いため、文脈からきりとってグラフィティだけを展示するのはどうかという考え方ですね。言い換えると、借景を無視して、日本庭園から石だけもってきたってしょうがないじゃんという感じでしょうか。

どれもバンクシーのファンや彼(彼ら?)のメッセージに共感する人にとっては、もっともな批判です。しかしバンクシーをよく知らない人、各国を旅してバンクシーの作品を見に行くほどの(金銭的、時間的、その他的)余裕がない人々にとっては、コピーであれオリジナルであれ(贋作であれ)、複数の作品にふれるよい機会になると思います。

私個人はけっこう楽しめました。バンクシー自身がイベントを企画するときは入場料がもっと安く設定されるという指摘もありましたが、だからってバンクシーがベルリンや東京に来て何かやってくれるわけでもないですしね。であれば、こういうのを見に行くのもありかなと思いました。

バンクシーのメッセージ。彼の世界観をよく表しているのではないでしょうか。

色々なことを考えさせられたバンクシー展でした。
バンクシーのグラフィティが、いくつかベルリンにもあるそうなので、今度探しに行こうと思います。

参考:
- バンクシーのインスタアカウント
- バンクシーのウェブサイト
"A Vandal Turned Idol" - Banksys Albtraum (rbb24の記事)
Antikapitalistische Deko für Kapitalisten (Frankfurter Allgemeineの記事)
- 今回のバンクシー展のウェブサイト

バンクシーの工房まで再現されていました

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