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前世紀の終わりごろアパートを探した時の思い出

ベルリンでさんざん家探しに苦労しましたが、そういえば昔も同じことをしていたなと過去の話を思い出しました。前世紀の終わりごろ、ドイツ語圏の別の街で一人暮らしをしていた時のことです。

その時はネット黎明期を過ぎたくらいのタイミングで、家庭にインターネットはまだ普及していませんでした。日本の大学のコンピューター講座で「メールの書き方・送り方」みたいな技術(?)を半年かけて習うくらいの時代でした。稀に出現する携帯電話を持っている人とか、すかした奴とおもって見てました。今思えばそれもミニ冷蔵庫みたいに重くてでかかったはずなのですが、当時はそれが最先端のテクノロジーだったのです。

そんな時代にどうやって家を探したかというと、あさイチで新聞を買ってそこに載っている不動産情報を見て、片端から電話をかけて内見の予約をしていくのです。インターネットが普及していないので、情報収集手段は新聞で、てっとり早いコミュニケーション方法が(固定)電話でした。ほかにどうしようもないんですが、下手な日本語訛りのドイツ語で知らん人たちに電話するのとか死ぬほどイヤでした。基本的な用語も知らないし。

その当時の私がどれくらい無知だったかというと、分譲物件に電話をかけたり、完全予算オーバーのアパートを見に行ったりするほどでした。日本人ってまだ当時は多少リッチなイメージがあったので、金持ちだと思われたのかもしれません。有名テニスプレイヤーが投資物件として買ったけっこうなマンションの内見をしたことも、今となってはいい思い出です。中を見てから、あれ、なんかこれ私の予算じゃ無理だよね……と思い、冷や汗をかきながら不動産屋に断る感じです。あ~なんかまた失敗しちゃったなという一人反省会を何度かやりました。

その時覚えた重要単語が「Gangklo」でした。要は、部屋の中にトイレがなくて、その階の住人が共同で使うトイレがあるサブスタンダードアパートの意味です。日あたりが悪いのもバスタブがないのも狭いのも我慢できますが、夜中にトイレに行きたい時に部屋の外に出ないといけないのはどうしてもイヤだったので、それは最速で覚えました。衛生よりなにより、真冬とか寒くて最悪ですよね。あと、寝ぼけて鍵を忘れて自分の部屋に戻れないリスクも恐ろしかったです。ただ、この単語もリンク先のDudenでは古いって書いてあるので、もうそんなアパートは少ないのかもしれません。

そのうちぴったりのぼろい(しかしトイレつき)ワンルームが見つかり、そこに引っ越すことができました。それなりに快適で、そこには7年くらい住みました。

振り返ってみるとあちこち遠回りして、ずいぶん効率の悪い家探しでした。その分なんだかいつまでも憶えていることが多いです。

そう言えば今のアパートの1階にもGangkloがありました。ベルリンにもありますね。
住民ではなく隣接する店のお客さんが使っています。くさいです。

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