自分の主導権を握るのは、いつだって自分 – ル・ポールのドラァグレース
アメリカで10年以上続く人気テレビシリーズ「ル・ポールのドラァグレース」
アメリカのNetflixには上がっていなかったのだけど、メキシコに引っ越したら見られるようになった。
このAmerica's Next Drag Super Starを決める勝ち抜きコンテストは、ドラァグクイーンの美しさや面白さ、クリエイティビティ、過激なバトルを楽しめる。だけでなく、強くしなやかに生きるヒントがたくさん詰まっているのだ。元気が欲しいとき、自分を奮い立たせたいときにおすすめ!
わたしがこの番組を見て感じたことをつらつらと書き出してみた。
言葉の価値を決めるのは
わたしたちは日常、さまざまな言葉に笑ったり、泣いたり、怒ったり、喜んだり、感銘を受けたり、イライラしたり、傷ついたりしている。
刀のように鋭く突き刺す言葉
宝石のように輝き自分を高める言葉
カイロのように心を温めてくれる言葉
氷のように冷たく突き放す言葉
ゴミのように価値のない言葉
「言葉を放つ人」だけがその意味や価値を決め、口から放たれる瞬間から、すでに刀や宝石や氷になっていると思う人が、もしかしたら多いのかもしれない。
でも、本当はそうじゃない。
受け取った人が、その意味や価値を決めている。受け取る人も、それが宝石なのか、ゴミなのか、カイロなのか、氷なのか、自分で決めることができるのだ。
「宝石として受け取ってもらえるように」との思いがこもった姑さんの育児アドバイスが、受け取る側にとっては「時代遅れで役立たずの押しつけがましいゴミ」になってしまうこともある、というと伝わりやすいだろうか。そのアドバイスは宝石なのか、ゴミなのか。正解があるわけではなく、それぞれがジャッジしているだけだ。
番組の中で、審査員が求めるレベルのパフォーマンスが中々できない一人のクイーンがいた。彼女は自信を失っており、準備中にル・ポールがやってきて話しかけられたことについて「わたしはル・ポールに目を付けられている!」と仲良しのクイーンに怒りながら愚痴った。
それに対し、その仲良しのクイーンは「目を付けられているんじゃない。それはアドバイスよ。他の案はないの?もっと現代的でみんなが知っているもの」と返した。落ちこぼれクイーンは当初のプランから変更してチャレンジし、見事その回の勝者になった。
誰しも、自信を失い自己否定モードになってるときは、些細な言葉にも自己否定に繋がるようなネガティブな響きを探してしまう。
そのクイーンの中では、自分を審査する立場であるル・ポールの言葉は当初、彼女に対する批判であり鋭い刀の形をしていた。心を開いている友人の助言を受け、それを宝石に変えたのだ。
自分の主導権は自分にある
ドラァグレースでは、審査員からの辛口批評がある。
あるクイーンは「メイクがおかしい」と指摘された。確かに彼女は、わたしから見ても漫☆画太郎先生の作画かと思うようなベースメイクで、お世辞にも美しいとは言えなかった。彼女は指摘を受け入れメイクを改善し、最終回では別人のように美しく洗練されていた。
別のクイーンも同様にメイクについて指摘を受けた。彼女のメイクは、下手というより「ジャンル違いのメイク」という感じだったのだが、すぐさま審査員好みのビューティー系のメイクに軌道修正した。しかし、コンテスト終了後は、元々のメイクのスタイルに戻っていた。あくまでもコンテストを勝ち抜くため、一時的にメイクを変えていたのだ。
同じメイクに関する指摘であっても、自分を根本から変えるきっかけにすることもできるし、目的のために一時的に受け入れ、自分の本質は揺らがせないとすることもできる。もちろん「審査員はわかってない!」と撥ねつけて自分を貫くことも可能だ。
批評を受け取った側はどう行動するか選べるし、決められる。自分の課題は自分のものだ。
自分の反応も捉え方も行動も、いつだって主導権は自分にある。
主語を他人にして「選ばされた被害者」になる方がラクだと感じることもあるかもしれない。だけど被害者でいる限り、周囲に「加害者」を生み続けることになる。
自分で選び、決める。自分の人生の始まりだ。
ル・ポールからのメッセージ
ル・ポールはこのレースを通じて「他人からの批判にどんな意味や価値を持たせるかは、受け取ったあなた次第」ということを後輩のクイーンたちに伝えようとしている。
それは「女装をするゲイ」であるドラァグ・クイーンという存在がこの社会で、長らく厳しい批判や差別にさらされ、虐げられてきたからだ。同性愛に否定的な宗教が多く、男らしさ/女らしさを大切にする伝統的価値観を持つ文化も数多く内包するアメリカ社会。ドラァグ・クイーンというだけで通りすがりの暴力に遭う事件も数え切れない。
ただ「自分らしくある」だけで他人から石を投げられてしまう。そんな彼女たちが力強く自分を肯定し、自分の人生を生きるられるように、先駆者であるル・ポールはテレビでこの番組をやっているのだ。
第一シーズン終了後、「審査員のわたしに対する批評が、辛辣なものしかなかった。とても傷ついた。」と怒るクイーンたちがいた。それに対するル・ポールの言葉をご紹介したい。英語はNetflixの字幕よりお借りし、わたしが和訳(意訳)しました。
では最後に、お決まりの名台詞を。
If you can't love yourself, how in the hell you gonna love you somebody else?
– 自分を愛せずに、どうやって他人を愛するっていうの?
バナー写真は下記サイトよりお借りしました。
https://notifarandula.club/
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