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ディープラーニングは結局、言語脳機能を加速させるだけか

入力側はともかく、出力側で言語脳機能に向く形で絞られる。入力側に流れこむビッグデータ中に非言語脳の知が含まれるか反映されることが仮にあったとしても、出力されるときにはその知は失われざるをえない。

結果として、いま支配的な言語脳機能への依存がますます進むだけだ。

それはディープラーニングが描きだすバラ色の未来とはほど遠い。

ディープラーニング用のコードが書ける人はぜんぶで50人ほどしかいないという。まだ間に合う。

彼らを熱帯雨林の音環境に連れてゆくことができれば、あるいは事態をよい方向に変えることができるかもしれない。

李セドル九段がAlpha GOに1勝したことで、かすかに可能性がみえた。

※入出力の話は、ディープラーニングであつかうニューラルネットワークなどでの入力層、出力層をイメジしています。非言語脳機能は、非言語性(非記号連節性)情報処理能力がかかわる伝統知や直観知などをイメジしています。言語脳機能は、私たちがふつうに用いる知をイメジしています。対象を言語化(連続的多様体を分節化し組織化)した知です。

※ここで私が感じている危機感をよく表現する箇所を大橋力『音と文明』(近く書評を載せます)から引用します。

 ここで最大の問題になるのが、熱帯雨林型の情報環境に固有の情報の高密度性、高複雑性に他ならない。それは、音については、可聴周波数帯域を数倍上廻る周波数帯域の広さと豊かなスペクトルのゆらぎ構造であり、光については、視力限界を果てしなく上廻る空間密度と多彩なフラクタル構造である。しかも私たち自身の実験から見出されたところからすると、驚くべきことに、音、光のどちらについても、その情報密度を人間に知覚可能な範囲にまで低下させると、知覚をこえる高密度状態におけるよりも受容者の脳の活性を歴然と低下させるのである。
 これらの事実は、私たちの脳機能の健常性は、意識と知覚によって認知できる範囲内の情報をもってしては保持しえないという驚くべき真相を告げる。つまり私たちの脳の活性は、意識とはるかに隔たり知覚さえも超えてその彼方に拡がる超高密度で複雑な、すなわちほとんど完全に非言語的な情報世界の存在によって初めて、健常に維持されることになる。この超高速大容量で代謝する情報世界には、すくなくとも直接的に、低速小容量の〈言語脳モジュール〉の活性が追随する余地はない。いい換えれば、このように知覚を超えて心身に強く働きかける〈ハイパーリアル・エフェクト〉は、ほぼ完全に非言語脳本体によって職掌されつつ、デカルト的言語脳機能の圏外に拡がっている。(533-534頁)

#コラム #非言語脳 #伝統知 #ディープラーニング

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