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[英詩]Bob Dylan, 'One Too Many Mornings'

※ 旧「英詩が読めるようになるマガジン」(2016年3月1日—2022年11月30日)の記事の避難先マガジンです。リンク先は順次修正してゆきます。

ボブ・ディランの歌 'One Too Many Mornings' を今回は取上げます。1964年のアルバム 'The Times They Are A-Changin'' に収められた歌です。

クリストファ・リクスの研究書('Dylan's Visions of Sin', 2004)ではこの歌は「希望」(Hope)の章で論じられています。なぜ? と多くのディラン・ファンは思うでしょう。一聴して悲しみが漂っていることは否定しようがないからです。

この歌はダヴィンチにとっての「モナ・リザ」のような作品かも知れません。ディランはこの歌を秘密にしていて、カーネギーホールのコンサート(1963年10月26日)でも唄わず、アルバム 'The Times They Are A-Changin'' の最初のテスト・プレスにも入れていませんでした。録音そのものは1963年の10月24日に6テーク行っています。

1969年にナッシュヴィルでジョニー・キャッシュとデュエットした録音は公式には発表されませんでした。1976年のコンサート旅行では歌詞の新しい結末部分が加えられました。

動画リンク [Johnny Cash & Bob Dylan, 'One Too Many Mornings']

いづれも、この歌がディランにとって非常に重要でありながら、なぜか発表をためらわせるものがこの歌に含まれていることを暗示しています。しかし、リクスがその詩的構造をかなりの程度解明した今となっては、1963年のディランの傑作であることは疑いようのないところです。

8行連が3つの、ディランとしては短い詩ですが、内容は簡単には論じ尽くせないほど奥行きがあります。今回はそのエッセンスだけでも書ければと思います。

目次
原詩
日本語訳
構文
韻律
解釈
考察

※「英詩が読めるようになるマガジン」の本配信です。コメント等がありましたら、「[英詩]コメント用ノート(201708)」へどうぞ。

この定期購読マガジンは月に本配信を3回配信します。そのほかに副配信を随時配信することがあります。本配信はだいたい〈英詩の基礎知識〉〈英語で書かれた詩〉〈歌われる英詩〉の三つで構成します。2016年11月から主要な内容をボブ・ディランとシェーマス・ヒーニでやっています。英語で書く詩人として最新のノーベル文学賞詩人たちです。

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原詩

One Too Many Mornings
Bob Dylan

Down the street the dogs are barkin’
And the day is a-gettin’ dark
As the night comes in a-fallin’
The dogs’ll lose their bark
An’ the silent night will shatter
From the sounds inside my mind
For I’m one too many mornings
And a thousand miles behind

From the crossroads of my doorstep
My eyes they start to fade
As I turn my head back to the room
Where my love and I have laid
An’ I gaze back to the street
The sidewalk and the sign
And I’m one too many mornings
An’ a thousand miles behind

It’s a restless hungry feeling
That don’t mean no one no good
When ev’rything I’m a-sayin’
You can say it just as good.
You’re right from your side
I’m right from mine
We’re both just one too many mornings
An’ a thousand miles behind


日本語訳

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