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[CD評] Thielemans Meets Franken

Toots Thielemans Meets Rob Franken: Studio Sessions 1973-1983 (Nederlands Jazz Archief NJA 2201, 2022) ['Treasures of Dutch Jazz', vol. 11]

Thielemans Meets Franken (2022)

フランケンのフェンダー・ローズが冴えまくる

ハモニカのトゥーツ・シールマンスとピアノのロブ・フランケンとのスタジオ・セッションを収めた3枚組。全部で3時間半以上あり、たっぷり楽しめる(全59曲)。

ピータ・バラカンさんが2022年の年間ベスト・アルバムの一つに挙げていたので、よく知られているかもしれない。

結論からいうと、フランケンのエレピが堪能できるご機嫌なアルバム。もちろん、シールマンスのハモニカもいい。ベース(Theo de Jong ら)やドラムズ(Bruno Castellucci ら)やギター(Peter Tiehuis ら)も達者なバッキング。 

音質はタイトで、この種の音楽にふさわしく、輪郭がくっきり。スタジオのライン録りの音に近いように評者には聞こえる。録音エンジニアは Dick van der Meer ら。

Disc 1 の録音スタジオは MC Studio, Nederhorst den Berg で、北オランダにある。中世からピートの採掘場であったというから、ヒーニの詩に出てくる bog people の詩群を想起する(デンマークの泥炭から発見された遺体を詠った 'The Tollund Man' など)。

Rob Franken (1941-83) は、オランダのジャズ・ピアニスト。プロとしてのキャリアの最初はフォーク・デュオ Esther & Abi Ofarim だったという。

ローズの音色に魅せられたのは1960年代後半だそうだ。このアルバムでのように、ローズは素に近い音を録ってくれればくれるほどよい(スタジオ・ミュージシャン的感想)。

トゥーツと組むピアニストになり、オランダ映画 'Turks fruit' (1973 [英題 'Turkish Delight']) のサウンドトラックを一緒に録音した(Disc 2 のトラック7 'Dat Mistige Rooie Beest' が同映画の曲)。 

Disc 1 ではトラック7 の Don Grusin 作の 'Waterwings' が特にご機嫌。

バラカンさんが2023年1月7日の番組(ウィークエンドサンシャイン)でかけたミンガス作のトラック8 'Goodbye Pork Pie Hat' も素晴らしい。

ルグラン作のトラック15 'The Summer Knows' はふたりのリリシズムが最高に発揮された名演。

ジャコ作のトラック18 'Three Views of a Secret' はしぶい。唸らされる。

Disc 2 では、しぶいジャズなどが多く、聞きごたえがある。

うれしいのは、トラック3 'Andre' と、ブラジルの Maurício Einhorn 作のトラック6 'Curta Metragem' と、トラック14 '
Sultry Serenade' と、トラック20 'Waltz for Sonny' で、シールマンスのトレードマークであった、ギターと口笛のユニゾンが聴けることだ。また、トラック6とトラック20ではめずらしいフランケンのシンセが聴ける。これらがすべて一発録りとは信じられない。

メキシコの Armando Manzanero 作のトラック13 'Somos Novios (It's Impossible)' は絶品だ。ふたりの演奏に幸せな気分になる。

Disc 3 では、さらにしぶい、ハードなジャズなどが多く、ご機嫌。

もし、こうした音楽がスーパーマーケットやホテルのロビーで聞こえてきたら、思わず足を止めて聴入りそうな音楽だ。(本アルバムに収められた音楽プロジェクト 'Fumu' [functional music] はそうした BGM として録音された。)

シールマンスのギターと口笛のユニゾンが聴けるのは、トラック1 'Old Friend', トラック4 'Days of Wine and Roses', トラック6 'Dirty Old Man', トラック11 'Secret Love', トラック14 'How High the Moon', トラック16 'Bluesette'.

Fumu 以外のボーナス・トラックとして、教育的TV番組 'Sloot en Plas' のためにフランケンが作った3曲が最後に収められている。

出色なのはトラック5 'There's No Greater Love' のフランケンのリズムの切れ味。バッキングのときの斬込み方や、ソロのときのアーティキュレーションはすばらしい。フランケンのソロを教科書にして勉強したというシールマンスの言葉は、こういう演奏を聴くと頷ける。

フランケンのソロの技法について、Wim Essed は 'octotonic techniques' を最大限活用していると指摘している(おそらく 'octatonic' の意味)。

Drawing of Rob Franken by Jan Kruis in the Rotterdam Jazz Artists Memorial

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#Rhodes

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