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[英詩]Bob Dylan, 'High Water (For Charley Patton)'

※ 旧「英詩が読めるようになるマガジン」(2016年3月1日—2022年11月30日)の記事の避難先マガジンです。リンク先は順次修正してゆきます。

英詩のマガジン の本配信、今月3本目です。歌われる詩の2回めです。今回は、ボブ・ディランのアルバム '"Love and Theft"' (2001年、下) に収められた 'High Water (For Charley Patton)' です。

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デルタ・ブルーズの父といわれるチャーリー・パットン (1891–1934) に捧げられています。歌のタイトルも、パットンの有名な曲 'High Water Everywhere' から採られています (下)。この動画はパート1とパート2とを収めていますが、それぞれ興味深い歌詞が唄われています。時間がなければ、前半のパート1だけでも少し聴いてみてください。

動画リンク [Charley Patton, 'High Water Everywhere' Parts 1 and 2 (with subtitles)]

アルバム '"Love and Theft"' が米国で発売されたのは、2001年9月11日のことでした (英国では前日の9月10日) (*)。その日に起きた世界史的事件を予言するような歌を同アルバムに求めるとしたら、それは 'High Water (For Charley Patton)' であると、ヘイリン (Clinton Heylin) は指摘しています。

(*) アメリカ同時テロ:「20年前、2001年の9月11日、アメリカで世界貿易センタービルや国防総省などに民間の旅客機が突入するという同時多発テロ事件が起きました。事件は、オサマ・ビン・ラディンが率いるアルカイダというイスラム過激派組織による犯行と断定されました。貿易センターの2つのビルが炎と共に崩れ落ちる映像は今も生々しく記憶に残っています。」(内藤正典[現代イスラム地域研究]、NHK「視点論点」2021年9月8日)

洪水の描写が確かに世の終わりを思わせるような歌です。'Nothing standing there . .  It's tough out there . .  Things are breaking up out there . . . It's bad out there / High water everywhere' のような歌詞にヘイリンはそれを見ています。

録音は2001年5月 (ニューヨークの Clinton Recording Studios)。録音エンジニアは Chris Shaw. プロデユーサは Jack Frost (Bob Dylan).

次の参加ミュージシャン。

Bob Dylan - vo, g
Larry Campbell - banjo
Charlie Sexton - g
Augie Meyers - accordion
Tony Garnier - b
David Kemper - timpani, cymbal, shaker, tambourine (?), backing vo

(vo: vocals, g: guitar, b: bass)

ところで、アルバム '"Love and Theft"' を詩集 'Lyrics 1961--2012' で見ていたら、アルバムの始めに次の写真が載っていました。ここからのカットがアルバム・ジャケットに使われているようです。

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参考文献 は、文字数の関係で別の note にあります。

※「英詩が読めるようになるマガジン」の本配信です。コメント等がありましたら、「[英詩]コメント用ノート(202110)」へどうぞ。

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【取上げる詩】2018年3月からボブ・ディランを集中的に取上げています。英語で書く詩人として新しい方から2番めのノーベル文学賞詩人です。(最新のノーベル文学賞詩人 Louise Glück もときどき取上げます)
【ひとこと】忙しい現代人ほど詩的エッセンスの吸収法を知っていることがプラスになります! 毎回、英詩の実践的な読みのコツを紹介し、考えます。▶︎英詩について、日本語訳・構文・韻律・解釈・考察などの多角的な切り口で迫ります。

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🔶High Water (For Charley Patton)

次のボブ・ディランの詩テクストはリクスらの校訂版による。

動画リンク [Bob Dylan, High Water (For Charley Patton) (Official Audio)]


High Water (For Charley Patton)
Bob Dylan

🔷1連

High water risin', risin' night and day
All the gold and silver are being stolen away
Big Joe Turner lookin' east and west from the dark room of his mind
He made it to Kansas City, Twelfth Street and Vine
 Nothing standing there
 High water everywhere

(注)
Big Joe Turner 米国のブルーズ・シャウター (1911-85)。ミズーリ州カンザス市の出身
Kansas Cíty cf. Big Joe Turner, 'Kansas City Here I Come'

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