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初めての電子出版(1)〜工程1(原稿の準備)

※あとで電子書籍にするので、「本」のような文体になっています。以下の文章の「本書」は「本連載」と読み替えてください。

はじめに

 だれでも初めて電子出版をするときには分からないことだらけです。私もそうでした。

 この本は、初めて電子書籍をつくって出版しようとする人のために書かれています。

 これまでに5点の電子書籍を作った経験から、簡単な作り方、苦労した点、改善できる点などを、現時点(2016年9月)で得られる最新の情報をもとに書きます。5点のうち4点は和文で、そのうちの1点は縦書です。あと1点は英文です。5回とも少しずつ違うやり方をしました。今も最善の方法を模索中です。

 出版したプラットフォームは4点がiBooks(アイブックス)、 Kobo(コボ)、 Kindle(キンドル)などで、1点はKDPセレクト(キンドル限定)です。それぞれに特色が違いますが、基本となる原稿ファイルはEPUB形式です。表紙は各ストアごとに求める大きさが違います。それぞれに最適の表紙を作ることもできますが、本書では共通の表紙を1点作って、それを全店で使うという方法です。

リフロー型

 本書で扱う電子書籍のタイプと目標を簡単に書いておきます。

 レイアウトのタイプは文字中心のリフロー型です。ときどき画像を入れます。画像中心の場合や漫画など、レイアウト固定型には対応していません。リフロー型は、読者が自由に文字の大きさなどを変えられるタイプです。本文の検索もできます。レイアウトが固定されていないので、予期しない配置になることもありますが、文字中心ならリフロー型の方が読みやすいでしょう。

目標

 目標は

・電子書籍を出版する
・最小の手間でつくる(最大の効果をねらう)

と、シンプルです。ともかく、最初の1冊を出すまでは、分からないことが多くて、大変に感じられることでしょう。しかし、1冊出してしまえば、あとはその経験が生きてきて、いろいろなことが試せるようになるでしょう。

 また、電子書籍を作るのにあまり時間がかけられないという人を想定しています。EPUB 形式のファイルを直接に書ける Sigil のようなソフトもありますが、プログラムやコードを書くのが好きという人は別にして、本を書きたいだけの人にはやや不向きです。本書では文書を作るのにふつうに使われるワープロ・ソフトのワードを使った方法を紹介します。ワードで文章を書いて、それをEPUBに変換するというやり方です。EPUBファイルさえできれば、ほぼ完成です。

 かかった時間は、私の場合で、1点あたりの製作期間は平均して1週間、実質的な作業時間は2日間でした。ただし、原稿の執筆時間は除きます。

 最初の1冊はよけいに時間がかかるかもしれません。工程の全体像が頭に入ると、次からは少しずつ速くなると思います。

用意するもの

 本書を読んで実際に電子書籍をつくろうとする人は次のものを準備してください。

・Word(2007以降のもの)〔拡張子がdocxのファイルが作れる他のソフトでも可(Office Online、LibreOffice、Googleドキュメントなど)〕

・Windows PC(Linux等でも可)→ Inkscapeのため〔最終的に1560 x 2496程度のJPEG画像を作れる環境があればそれでも可。オンライン画像エディタのPixIrなどでも作れる。また、出版しようと思うプラットフォームによっては800 x 1200程度の画像でも大丈夫だが、アイブックスが短辺1400ピクセルが必要。本書では画像1つで複数のプラットフォームに対応することを考える〕

 Word(ワード)は文章を書くためです。ただ、ワード単体でも1万円以上しますし、Excelも含めたOfficeパッケージは2万円以上からです。既にワードをお使いの方は、それをそのまま使ってください。

 実は私もこれまで電子書籍を書くのにワード(Word 2016 for Mac)を使いました。ですが、今回、本書を書くのには、上にも挙げた LibreOfficeのWriterを使ってみます。無料で使える、オープン・ソースのソフトウェアで、気に入れば寄付もできます(5ドル〜50ドル)。

 2つ目のウィンドウズPCは、表紙画像を作るためです。目標とする1560 x 2496ピクセルの画像を作るのに、使いやすいInkscapeというソフトを使うためです。別にウィンドウズでなくても、LinuxやUbuntuでも動きますから、そういう環境でも、もちろんかまいません。InkscapeのMac版もあるのですが、なぜか現状(OS X El Capitan)ではうまく動かすことが難しいので選択肢に入れていません。

 ただし、表紙画像はInkscapeを使わなくても、他にもいろいろな選択肢があります。オンラインで無料で使えるPixIrでもよいですし、PowerPointで作った絵を表紙画像にする方法もあります。また、さまざまの画像製作ソフトやサービスがありますので、それを使っても結構です。できれば、長辺2500ピクセル程度までが簡単に作れるソフトやサービスだと、複数プラットフォーム用には便利です。

 もちろん、有料で製作できるサービスも種々ありますので、考え方次第です。ともかく、電子書籍には表紙が必要です。

LibreOfficeを日本語化する

 LibreOffice Writerを使うに当たり、日本語インタフェースにしておきましょう。

 まず、 LibreOfficeをインストールします。

 つぎに、「Get LibreOffice interface translated in 日本語」の下にある「TRANSLATED USER INTERFACE」をダウンロードし、インストールします。そのときに、インストールされているLibreOfficeを変更しますと表示が出ます。インストールが終われば、もしLibreOfficeを起動中であればいったん終了し、再び起動します。すると、インタフェースが日本語に変わっているはずです。フォント名も日本語になっています。


工程

 電子書籍を作る工程は基本的には次の通りです。

1原稿の準備
2EPUBの作成
3表紙の作成
4入稿・出版

 以上の4工程のうち、最大の時間がかかるのは1「原稿の準備」でしょう。構想を練り、実際に執筆するのに要する時間は人により違います。ここでは、そのあと、その原稿を電子書籍用に整える工程のことに重点をおいて考えます。特に、電子出版初心者にとって一番むずかしいと思われるのが、電子書籍の目次の作成です。そのあたりも丁寧に考えます。

 2「EPUBの作成」は1でできたdocxファイルをEPUBに変換する工程です。この段階で電子書籍にふさわしい形式に変換されるので、ワードで見ていた時とは違うものが見えてくる可能性があります。それを調整する工程です。以上の1と2とは何度も往復することになるかもしれません。納得のゆくEPUBが得られるまで、docxを手直しし、変換するといった作業が続きます。

 3「表紙の作成」はデザインに対する考え方により、かける手間や時間が変わってきます。ここでは、3つの電子書籍ストアに共通のフォーマットのものを1つ作ることに重点を置きます。もちろん、本文より先に表紙を作成してもかまいません。

 4「入稿・出版」は、うまく行けばすんなりと通りぬけることができます。が、現実にはストアごとに難所のようなものがあります。私が経験したトラブルと、その解決方法を書きます。

工程1「原稿の準備」

見出し

 電子書籍用の原稿の執筆でもっとも大事なのは見出しです。ワードを使う主な理由がこの見出しにあるといっても過言ではありません。ワードでは見出し1、見出し2、見出し3のようなレベルを簡単につけることができます。

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