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[英詩]Bob Dylan, 'Brownsville Girl' (3)

※ 旧「英詩が読めるようになるマガジン」(2016年3月1日—2022年11月30日)の記事の避難先マガジンです。リンク先は順次修正してゆきます。

英詩のマガジン の本配信、今月3本目です。歌われる詩の2回めです。今回はボブ・ディランのアルバム 'Knocked Out Loaded' (1986年、下) に収められた 'Brownsville Girl' の続きです。

かつての恋人、'Brownsville Girl' とは誰か。なぞは深まるばかりです。

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録音は1984年12月6, 10, 11日。オーヴァダブは 1986年4月30日、5月1-2, 16, 19-20日。

今回も詩テクストをリクス校訂版に準拠して考えます。コーラスをのぞき17連ある長い歌なので数回に分けて扱っています。前回は7-10連とコーラスを扱いました。今回が3回めで、11連から扱います。

参考文献 は、文字数の関係で別の note にあります。

※「英詩が読めるようになるマガジン」の本配信です。コメント等がありましたら、「[英詩]コメント用ノート(202011)」へどうぞ。

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英詩の実践的な読みのコツを考えるマガジンです。
【発行周期】月3回配信予定(他に1〜2回、サブ・テーマの記事を配信することがあります)
【内容】〈英詩の基礎知識〉〈歌われる英詩1〉〈歌われる英詩2〉の三つで構成します。
【取上げる詩】2018年3月からボブ・ディランを集中的に取上げています。英語で書く詩人として新しい方から2番めのノーベル文学賞詩人です。(最新の Louise Glück もときどき取上げます)
【ひとこと】忙しい現代人ほど詩的エッセンスの吸収法を知っていることがプラスになります! 毎回、英詩の実践的な読みのコツを紹介し、考えます。▶︎英詩について、日本語訳・構文・韻律・解釈・考察などの多角的な切り口で迫ります。

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前回までのあらすじ

1連の movie は明らかに西部劇映画の 'The Gunfighter'「拳銃王」(1950)。主演が Gregory Peck (Jimmy Ringo 役)。Hunt Bromley という若者に背後から撃たれ、 Ringo は致命傷を負う。自分が Bromley に対して先に銃を抜いたと、保安官に語る。

2連で Ringo は、公明正大な撃ちあいだったことにしてやれと保安官に告げる。

3連は一転し「きみとぼく」のことを語る。「きみ」のことが忘れられないさまを、鉄球の枷と列車に喩える。

4連はふたりのデートの場面。the painted desert をやってきた「きみ」と車に乗る。

5連でふたりはサン・アントニオに到着。「きみ」はメキシコで医者を探しに行くが、帰って来ない。

6連は一転し現在の「彼女」とのドライブを語る。「彼女」は「きみ」ではないが魂にあの暗いリズムを持つ。動詞の過去時制と現在時制との対照の技法について英詩の典型例 'She dwelt among the untrodden ways' を見る。

コーラスで巻き毛をしたブラウンズヴィル・ガールが登場。ブラウンズヴィルはメキシコに近く、メキシコで消えた「きみ」を想起させる。

7連はふたりのドライヴ。テキサスのヘンリ・ポータ宅を訪ねるが、仕事中で、赤毛の妻ルビーが応対する。

8連はルビーが「生きている死者の国へ ようこそ」という意味深な言葉を発する。

9連はルビーがどこまで行くのかと問う。行けるかぎりどこまでも行くと答える。

10連は映画のなにかが頭から離れないこと、映画の中で多くの人が自分のほうを見ているようであること。

コーラスは6連のあとのそれと同じ。


まとめ

ボブ・ディランの 'Brownsville Girl' は、映画 'The Gunfighter' (1950) の Gregory Peck への言及をおりまぜつつ、なぞの恋人への思いをロード・ムービーのように物語る傑作。男が墓地に追い込まれる場面、女が男のために法廷で証言する場面、相手のいない寂しさの吐露、Peck の映画を観るために列に並ぶ場面が続く。13連の 'original thought' の解釈を考える。

動画リンク [Bob Dylan, 'Brownsville Girl' (Official Audio)]


原詩+注+日本語訳+韻律+解釈

Brownsville Girl
Bob Dylan

11連

Well, they were looking for somebody with a pompadour
 I was crossing the street when shots rang out
I didn’t know whether to duck or to run, so I ran
 “We got him cornered in the churchyard,” I heard somebody shout

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