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[書評] 世の中の縮図ならぬ宇宙の縮図を思わせる異聞奇譚

坂本廣志『坂本廣志とスカイフィッシュの秘密 第一巻』(2016)

坂本廣志『坂本廣志とスカイフィッシュの秘密 第一巻』(2016)

世の中の縮図ならぬ宇宙の縮図を思わせる異聞奇譚

異聞奇譚というと、ふつうは世の中の縮図であることが多い。それは歌舞伎などでもそうだろうし、小説や伝承のたぐいでもそうだろう。どんな表現形態であっても、人間社会をある程度反映するのがふつうだ。

しかし、本書はもっとスケールが大きい。ひかえめに言っても地球史の縮図、正確に言えば宇宙史の縮図のようなところがある。しかも、実話である。

評者は最初はおもしろくてどんどん読み進んだのだが、途中から、これは襟を正して読むべきところがあると気づいて、しっかり読み直した。

本書は1946年生れの著者が12歳のころ、1958年の六甲山でのある出来事から記述が始まる。

著者は朝から六甲山に水晶を採りに行く。午後3時に尾根づたいにけもの道を下りる。〈3日前に降った雨で、けもの道に3mのくぼみ〉ができていたのに気づかず、走って下りていたため、くぼみに飛び込んで滑り、〈一瞬で地獄谷の上まで落ちて〉しまう。

その時、著者に助けの手をさしのべたものが二つあった。

一つは、宇宙人ヤコフ、もう一つは竜神様であった。後者を本書では「スカイフィッシュ」と呼ぶ。

これだけでも驚くべき展開だが、ここから先は、一般読者にはとても信じられない奇想天外な話になる。が、信じる信じないはべつとして、著者が〈3度死ぬかと思った出来事〉から無事に生還したのは事実だ。現にこの少年時代の出来事を大人になってから著者が回想しているのであるから。

その救出のもようを簡単に述べると、著者の100mの落下を止めたのはヤコフで、その後、気絶した著者を竜神様が上空に運び、さらに和歌山沖に移動し、海底に行き、最後に山中の落ちたところに戻る。スリリングな救出劇だが、それは本書全体からすると、わずか半世紀前のエピソードに過ぎない。

もっとはるかに重要なのは、この二者が地球史で果たしてきた役割のほうであると評者には思える。簡単にいうと、ヤコフら宇宙人は地球の竜神様を守る役目をつとめている。

宇宙人が地球に来たとき、竜神様を下等な生命体とみなして、地球の覇権をめぐる大戦争をしかけたのだが、相手が自分たちよりはるかに上であることが分り、両者は相互不干渉の協定をむすび、宇宙人が竜神様を守ることになるのだ。その大戦争があったのが1万5千年前のこと。

宇宙人といってもいろんな種族があるということだが、その時に地球にやってきたヤコフは混血種ブルーの種族で高等生命体1番(生命体のランクは上から1番に始まり100番まである)。一方、竜神様は遥かに進化した最高生命体。竜神様は40億年前に地球で誕生したが、20億年前に最高生命体になった。わずか20億年で最高生命体に達するというのは宇宙的には稀有なことであるという。なぜなら、下等生命体から高等生命体にまで進化するのに50億年かかるからだ。

宇宙では、下等生命体・中等生命体・高等生命体(知能指数1万2千)・最高生命体(知能指数1000万)の順で進化するという。著者は、当初は高等生命体の1番の1に登録されていたが(本書第9章48)、後で最高生命体に達する。

本書は、来る日も来る日も六甲山系に水晶を採りに行く少年の話である。その間に、ヤコフや竜神様、魔王たちが入れ替わり立ち替わり登場する。少年は竜神様や王子様や蘆屋道満の指導のもと、めきめき力をつけてゆく。ついには脳の中に最高生命体の知識が入り、木星に行き、そこの科学者たちに最高生命体であると宣言されるに至る。

ここまででも驚きの連続だが、本書は序章に過ぎない。

本書は、〈フヤナシリーズ 2〉で、冒頭に述べた通り、1958年から1959年の六甲山および日本全国の話だ。

〈フヤナシリーズ 1〉は、『坂本廣志と宇宙文字カタカムナ』で、金鳥山の洞窟の話。文中に「主人が14歳のときに亡くなったお父様」との著者の妻の表現が出てくるので、それ以前、つまり1960年ころの話であると思われる。

「フヤナ(287)」とは著者の(宇宙における)名前で、「以前の銀河の大管理者様の名前」だという(本書第8章45)。宇宙では上のほうの地位に当たる。

本書の前半(第4章—第7章)は、竜神様の、強くなるには強いものと戦うべし(「強いものと戦えば簡単に魔物を倒すこともできるようになります」第6章30)との指導のもと、日本各地のつわもの(魔物や鬼や式神たち)との戦いの修行がつづく。最初は小さい少年(身長1.2m)を馬鹿にする相手たちにボロボロに負けるが、そのうちに相手のエネルギーを取込んで、その力で相手を攻撃するわざを身につけ、無敵になってゆく。後年あきらかになるが、こうした著者の少年時代の訓練は、45年後に式神に襲われたときに死なないための備えであった。

後半(第8章—第11章)は、それらの大魔王たち(地球に「星流し」になった宇宙人たち)の魂を綺麗にして、肉体に入れ、元の星に返すという作業をえんえん続ける。そうやって帰還させる魂の数は数万にのぼる。

その救出作業のために向かう先は多岐にわたる。出雲、高千穂、天川村、剣山、恐山、大山、留萌、秋芳、大分、大隅半島、霊界といったところだ。

作業の仕上げに木星に行って20日間滞在する。

巻末に「スカイフィッシュ・竜神様 解説」という文章が附いており、本書で紹介される内容の基礎知識がまとめてある。竜神様の進化の歴史、竜神様の生態、最高生命体である竜神様の細胞、竜神様の役割、竜神様の生れ方・コロニーを作る方法、宇宙人との関係 竜神様と宇宙人の大戦争、5万年前の大転換期、大魔王になった宇宙人の魂の救済の項目に分けて解説してある。

本書には収められていないが、著者は自身のウェブサイトなどで、竜神様の写真や動画などを公開している。

#書評 #坂本廣志 #スカイフィッシュ #六甲山

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