[書評]又吉直樹『劇場』
又吉直樹の小説第二作。前作で又吉の文体に魅了された人は本作も間違いなく「買い」。
期待を裏切られることはない。作者の文章はますます磨きがかかり、演劇論を通して語られる感性のきらめきは本書の随所に見られる。前作と合わせて、広く芸術論としても読めるし、クリエータを目指す人が読んでもきっと得るところがあるだろう。もちろん、劇団周辺の多彩な人物群像が織りなす愛憎半ばする葛藤はそれだけでおもしろい。何より主人公の永田と沙希の泣き笑いに包まれた関係が、愛おしくなるくらい純粋な男女の恋の