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音楽 評 / 旅(ピアノ)

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#アイルランド

【書評】音楽史の域をこえて詩学に接近する

M.カッロッツォ、C.チマガッリ『西洋音楽の歴史 第1巻』(シーライトパブリッシング、2009)  原著は Mario Carrozzo, Cristina Cimagalli: 'Storia della musica occidentale', vol. 1 (Roma: Armando Armando, 1997)。全3巻。すでに、第2巻(2010)と第3巻(2011)まで翻訳が出て、完結している。  第1巻は古代ギリシアから16世紀までを扱う。その範囲を3部に分け

[クランコラ用] Seán Corcoran氏を偲んで

 ※メールマガジン「クランコラ」用に2021年10月に書いたもの(一部修正)[ケルトの笛ブログ版] ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■ Seán Corcoran氏を偲んで ■   ■                 Micheal H ■────────────────────────── みなさま、お元気ですか。Micheal H です。「クランコラ」を創刊当時からお読みの方は憶えていてくださるかもしれません。 アイルランドのグループ「Cra

自分の専門的立場

「note 読者の購入動機」という記事を書きました。そこで、専門的知識を求める読者向けに自己PRをする必要があるという主旨を引用しました。この記事です。 そこで、私が書くたぐいの記事に、果たして「専門的知識」が反映されているのかどうか、知りたい読者のために、自分の専門的立場を以下に書きます。 私はとある研究機関に所属し、アイルランド語文学、英文学、米文学、詩学、また時にはコンピュータ・サイエンスを研究しています。現在の専門は、アイルランド語詩歌、詩学、聖書学です。 詩学

Pipes紀行

2016年4月29日(金・昭和の日)大阪城音楽堂で一連の Ireland Festival in Osaka 行事の取りとして「ケルティック音楽&ダンス」および「ケルティックビアガーデン&マーケット」が開催された。お目当ては Pipers Caffe だった。が、その話の前に当日の下準備のことを。まず腹ごしらえ。一路得正へ。 得正といえばカレーうどん。カレーうどんといえば得正である。何の不足があろう。得正のうどんのルーツは讃岐うどんながら、独自の粉の配合により、「讃岐うどん

[書評]奈加靖子『緑の国の物語』

奈加靖子『緑の国の物語』(愛育出版、2021) アイルランド歌集。12曲の解説、手書きの楽譜、訳詞に絵 (柏木リエ) がついた大型の本。原語で唄った CD が附属する。CD の歌とハープは奈加靖子、ピアノは永田雅代、録音は塙一郎。 本は3章に分かれ、各章に4曲が配される。 第1章は「季節はめぐり たどりついた愛のかたち」の題で、Thomas Moore (1779-1852) の〈夏の名残りの薔薇〉(The Last Rose of Summer, 'Irish Mel

Lasairfhíona

アイルランドのシンガー、ラサリーナ・ニホニーラが新作CDのための基金を募集していた。基金は目標額に達した(2016年4月28日時点)。晴れてアルバムが出そうだ(ぱちぱち)。 そのサイトに動画が用意されている。 サイトの説明文。 I’m Lasairfhíona, a singer/songwriter from Inis Oírr, the smallest of the Aran Islands, situated in beautiful Galway Bay, I

シャン・ノース歌唱への旅〜ジョー・ヒーニ

※ My Musical Journey 器楽篇(ピアノ)に続き、歌篇を開始します。歌篇はほぼシャン・ノース歌唱のことになる予定です。 My Song Journey 1: ジョー・ヒーニ アイルランドの無伴奏アイルランド語歌唱「シャン・ノース」の研究をライフワークにしようと思い定めたのはいつだったか。今となっては想いだせない。といいつつ、ブラック・ホークとケン・ハントのことを語ったのが前回。 以下、本編の序説を無料でお読みになれます。 どうぞ、お楽しみください。

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[archived] Ciarán Ó Con Cheanainn (CD Review)

CD REVIEWS: GERALDINE BRADLEY From the Rising Spring – Cloch Fhuaráin Coolnacran Records 001 One has to admire a singer who is willing to take chances. Singers too often allow a particular tradition to contain them, making them reluctant