自己免疫性の肝機能障害の話
自己免疫性疾患とは
普通では有り得ない事なのですが、自分の体に対して免疫系が働いて攻撃をして、それによって引き起こされる疾患を指して、自己免疫性疾患と呼びます。本来ならば、自分かそうでないかを区別して、自分以外のモノ、すなわち異物に対して排除しようと働きかけるのが免疫系の防御システムなのですが、何らかの理由で自分の成分(組織や細胞)に対して異物と同じように排除し、抗体を作ってしまう事が原因で起きるとされています。
原因が何かということは、まだよく分かっていません。ですから、ある意味防ぎようがないのかもしれません。免疫系に何か異常が起きたのか、それとも自分のタンパク質の構造に何か変化が起きて、それを免疫系が誤って攻撃してきたのか、詳細はまだ解明されていないのが事実です。
免疫系が暴走しているような状態ですから、治療として行われることは、これを抑える事。すなわち、免疫を抑制するという事なのですが、困ったことに、これをすると免疫系の全体が抑制されてしまいます。患者本人は風邪のようなものを含めて、感染症に対する抵抗力が下がってしまうという問題を抱えることになります。ワクチンがある場合はこれを接種することである程度の効果が期待できますが、そうでない場合は注意が必要です。マスク、手洗い、人混みを避けるなど、自分で注意しなければなりません。
現在、日本では自己免疫性疾患が増えつつあるとのことです。
自己免疫性肝疾患は肝臓の病気の一つ
自己免疫性肝疾患は慢性的に経過することが多いのですが、幹細胞が障害されることは否めません。それに伴って、肝細胞に多く含まれる酵素などが出てしまうため、血中濃度が高くなってきます。もちろん、前回までに書いてきた肝機能障害を起こす原因を除いたうえで診断がつけられます。
先に、日本で自己免疫性疾患が増えつつあると書きましたが、自己免疫性肝疾患については、2004年度で全国に9000人ほどと推定されていたそうですが、2018年では全国で30000人ほどの患者がいると推定されています。つまり、この14年間で3倍ほどに増えたことになります。
免疫系のものですから、血液中のIgGは増加しています。また、各種の自己抗体の増えています。しかし慢性的に経過すると書いた通りで、特に肝臓は沈黙の臓器と言われたりするので、本人も気が付かないといったことがよくあります。健康診断などで肝機能異常を指摘されて、調べてみたらこの状態だったという事も、結して珍しくありません。
この病気が見つからないまま進行していくと、特に治療を何もせずに放置すると、結構その速度は速いようです。どんどん進んでいって、肝硬変や肝不全に至るといった例もあるそうです。ただ、治療を行なうとその進行速度は改善され、炎症も改善されます。見つかったらキチンと治療を受けることで、酷くなることを避けられるようですね。
どんな人がなりやすいか
遺伝することは無いようですが、何らかの機序として関わるがあるかもしれません。男女比では、男性に対して女性の割合が約4倍、圧倒的に女性が多いとなっています。特に中年女性(40歳~60歳代)といった人が多い傾向がありますが、若い女性でも起きることがありますし、最近では男性も増えている傾向があるようです。
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