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記憶にないという話

鍵かけたっけ・・・

所用で出かけるので家を留守にするという時、普通は施錠しますよね。鍵をかけて外出するのが一般的です。家人が残る時は内側から鍵をかけてくれるでしょうし、地域によっては鍵をかけずに出かけることができるというところもあるでしょうが、普通に暮らしていれば外出時は家に鍵をかけます。

こんなことありませんか。あれ、そういえば今日、家を出る時に鍵をかけたっけ・・・。そう思った途端、不安になってきたりして・・・。カバンの中に鍵があるから、多分かけているはずと自分に言い聞かせたりすることがあるかもしれません。私は普段、鍵をポケットに入れて靴を履き、鍵をかけたらその鍵をカバンの中に入れる、別の場所に置く事で鍵をかけたと確認するようにしています。

さて、自分が行った「鍵をかける」という行動にもかかわらず、なぜ忘れてしまうのでしょうか。こんな心配、じつは案外多くの人が同じ体験をしているようです。そのためでしょうか、外出先から施錠を確かめるための何かアイデア商品が欲しいというリクエスト、結構多いんだそうです。

人間の脳って非常に便利な作りにできていて、一定の手順で行う行為を一連の動作として、脳の中に自動化されたパターンとして覚えてしまうみたいなんです。そしてそのパターンに従って自動的に処理(行動)するために、いちいち記憶として覚えていなくても行動してしまえるようになっているということです。便利と言えば便利なのですが、時々困ったことが起きてしまいます。

自動化の功罪

何かの拍子にそのパターンと違う行動をした時、混乱したり違和感を感じたりしたことはありませんか。例えば、
 1 鍵を確かめてズボンの右のポケットに入れる
 2 靴を履く
 3 カバンを左手に持つ
 4 玄関の扉を開けて外に出る
 5 右手でポケットのカギを取り出して施錠する
 6 施錠を確かめたらカバンを下に置く
 7 カバンの中の所定のポケットに鍵を入れる
 8 カバンを右手に持って出かける
仮にこのようなパターンで自動的に処理をしていたとします。最初に鍵をズボンの右ポケットに入れずに左手で持っていたとすると、鍵がないと勘違いをして慌てて探してみたり、していませんか。また、玄関の扉を開けたらハガキが来ていたので簡単に宛名や送り主を確認したら、鍵をかけ忘れそうになったとか、ありませんか。

自動化出来ている処理は、時に別の行動が入ることで混乱してしまって、流れがスムーズに進まなくなってしまったりすることも出てきます。医療の現場ではこれが事故につながる危険性があるため、いちいち立ち止まって指さし確認をしたり声を出して確認したり、そんな事をして事故を防ぐ努力をしています。

チェックリストを作っておいてそれを使うという方法も有効なのですが、手順が変更になったり、より詳しいチェックリストに変わったりすると、どうしても混乱が起きてしまいます。例えば、使っているチェックリストが古いモノだったので漏れが出て来てしまった、これではチェックリストの意味がありませんし何よりも連絡や申し送りに不備があったのではないかということになって、すべてのチェックリストを見直さなければならなくなってしまいます。

一番怖いことは、記憶が曖昧なために何があったのかが分からなくなるという事です。そのためも、キチンと確認したという事を記録に残しておくことで、なるべくトラブルを防ぐと同時に、人間の曖昧さを排除することが大切です。誰が確認したか、どのタイミングや時間に行なったかなど、その時の条件も一緒に記録しておくことで、より正確に確認ができるようになります。

当人が上の空であったり別のことを考えていたりせずに、そのことに「意識を向けて集中する」、これが大切なことは言うまでもありません。


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