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血糖値に関わるホルモンの話

ホルモンとは

まずホルモンの話から始めます。
人の体には、それを良い状態に維持するために、さまざまな調節を行なう働きが備わっています。内分泌と呼ばれ、分泌された物質は一般に血液を介して運ばれ、ターゲットである臓器の細胞に働きかけます。分泌された物質はごく微量でその作用を発揮しますが、その量が多すぎても少なすぎても、体に何らかの変調をきたします。

どのくらい微量で効くかというと、50メートルのプールにスプーン一杯分のホルモンを入れたくらいの量で、その作用を発揮します。作られる場所も、働きかける臓器も、その働きも、ホルモンは一つ一つが異なります。現在100種類以上が分かってきていますが、今後さらに増えていく見込みです。

分類方法は一つではありませんが、その構造で見ていくと2種類に分かれます。
一つはペプチドホルモンと呼ばれるもので、栄養素の一つであるタンパク質を構成するアミノ酸と呼ばれる物質がつながってできているもの。もう一つはステロイドホルモンと呼ばれ、血液中のコレステロールを材料に用いて作られるホルモン。この2種類があります。


血糖値を下げるホルモン

インスリンが有名ですね。今取り上げている糖尿病の話題でも、インスリンの話は避けて通れません。そのインスリンの効きが悪くなったから糖尿病になるわけですから。ただ、インスリンは血糖値を下げる働きがあるといわれていますが、実際には「血糖値を下げる」のではなく、その本来の働きを全うした結果「血糖値が下がる」のです。この辺りはカン違いをしてはいけません。ただ、話を進める便宜上「下げる」という表現で統一します。

さて、「下がる」にせよ「下げる」にせよ、血糖値が下がるのは事実です。食事を摂ると腸で栄養が消化、吸収されて血液中に入りますが、これは糖(ブドウ糖)も同じです。そして、この吸収によって糖が血液中に増えるため、血糖値が上昇します。これは誰の体でも起きる普通の働きです。そしてこの時、血糖値の上昇によってインスリンが分泌されます。分泌をするのは、すい臓のランゲルハンス島というところにあるβ細胞と呼ばれる細胞からになります。

このインスリン、全身をめぐって末梢の細胞、筋肉細胞などに働きかけます。どんなことをするかというと、血液中の糖を細胞が取り込んでエネルギーとして使い、代謝を上げるようにさせるという働きです。食事を摂ると体が少し元気になった気がするという人が多いと思いますが、じつは体の中でこのようなことが起きているのです。血液中の糖を消費する結果として、血糖値が下がるということになります。

今のところ、血糖値を下げる効果があるホルモンは、インスリンしか見つかっていません。体の中にインスリンしか見当たらないことについて、次のような理由が考えられています。

人間は自由にものを食べることが出来るようになったのは、人類の歴史でもごく最近のことだそうです。それまでは長い期間にわたって食の確保が難しい時代があり、いつ飢餓状態なるか分からないような不安定な生活を続けていました。このため、血糖値についてみると下げる理由などほぼ見当たらず、如何にして低血糖状態にならないように維持するかということの方が重大な問題だったようです。血糖値を下げる必要はありませんが、食にありつけたらすぐに代謝を上げて、次の食の確保に動かなければなりません。こういった背景があって、血糖値を下げるホルモンはインスリンしか要らなかったのではないか、そのような事が言われています。


血糖値を上げるホルモン

血糖値を下げる働きはインスリンだけでしたが、では逆に血糖値を上げる働きがあるホルモンにはどのようなものがあるでしょうか。

実は結構たくさん存在しています。例えばグルカゴン、成長ホルモン、コルチゾール、アルドステロン、カテコールアミンなどなど、いずれも何らかの働きがあって、その結果血糖値を上昇させるものばかりです。その中の二つを紹介します。

グルカゴン 
すい臓のランゲルハンス島α細胞から分泌されます。インスリンがβ細胞ですから、すぐ近くということになります。肝臓のグリコーゲンに働きかけてこれを分解し、ブドウ糖に戻して血液中に放出します。その結果、血糖値が上昇します。

コルチゾール
糖質コルチコイドと呼ばれたりしますが、最近ではストレスホルモンと呼ばれる方が周知されているようです。腎臓の上に乗っている副腎と呼ばれる臓器の皮質の部分から分泌されます。ストレスホルモンですから、分泌されると体が緊張状態になります。今ではほぼあり得ない話ですが、昔は生と死は常に隣り合わせでしたから、いきなり猛獣に出くわすといったことも珍しくはなかったことでしょう(地域は限られるかと思いますが)。すると一気に緊張が走ります。選択肢は二つ、逃げるか闘うか、いずれにしても命がけです。そんな時に途中でくたびれたから一休み、そんな事は言ってられません。体が電池切れとでもいうようにならないよう、血液中にブドウ糖を多めに流してどんどん使わなければ間に合いません。結果として血糖値が上がることになります。今の日本では交差点の角を曲がったらライオンがいたなんていうことはありませんが、代わりに人間関係や仕事上の問題などでストレスを抱える人が多くいます。ストレスである以上、体にとってはライオンも上司も(?)同じことですから、ストレスホルモンが分泌されます。この状態が長期間続くと、高血糖状態が続くことになり、相応の変化が体に起きてきます。

その他、まだまだホルモンについては話題も分かっていない事も多々あるようです。

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