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酵素の話

今回は、食品添加物の中でこの記載を見ると個人的にちょっと違和感に感じる「酵素」について書いていきます。いったい何なんでしょうね、この「酵素」って。一般には酵素というと生物化学反応に出てくる物質で、食べた物の消化吸収に重要な役割を果たすたんぱく質といったところです。化学反応を仲立ちする役割りを持ちますが、薬品ではなく穏やかに反応を進め、しかも特異性が高いという特徴があります。

食品添加物としての酵素は一括名で、「食品の製造または加工の工程で、触媒作用を目的として使用された、生物細胞により生産された酵素類であって、最終食品でも失活せず、効果を有する食品添加物及びその製剤」という定義になっています。しかし、あくまで定義です。どんな酵素がどんな働きをしているかになってくると、一つ一つ見ていかないと分かりません。

さて、酵素を使用して食品を加工したとしても、その後の工程のどこかで加熱等を行うことで失活させていれば、酵素はもうその作用を発揮することはできません。加工助剤ということなります。完成した時点で酵素は働きを失っているため、表示しなくてよいことになるんですね。ただ、食品に残存して持続する効果を期待する場合は、一括名「酵素」との表示が必要になります。この辺りはややこしい。

では、酵素は食品においてどのような役割を果たしているのか、気になりませんか。調べてみました。消化吸収に関する働きは食べた人の体の中の話ですから、今回は除外しますよ。

まず、食品の発酵にかかわる働きが挙げられます。酵母や菌などの微生物が食品に含まれている糖を分解して、酸やアルコールを産生する働きです。発酵ですから、人間にとっては有益な反応です。このときに働く酵素は「発酵酵素」という名前で呼ばれます。ヨーグルトの話で必ず出てくる乳酸菌やビフィズス菌、麹菌なんかもこういった働きがあるんでしょうね。

他にも、保存性を向上させる酵素があるそうです。農産物などは放置しておいたりすれば腐敗してしまいますよね。これはその農産物(野菜やフルーツなど)が持っている酵素の働きによるので、その働きをストップさせようというものです。そのために別の酵素を加えて不活性化させるわけですね。

また、食品の質を改善するため目的で酵素を添加する場合があるという事です。醸造などを行う食品では、特定の酵素を添加して不要な成分を分解・除去することがあるそうです。そうすることで、特定の風味を生み出したり、液体であれば透明なものにしたり、そんな働きをするんですね。

酵素と一括りになっていますが、使用にあたってどのようなメリットがあるのでしょうか。

先に挙げた酵素の働きも当然メリットですね。しかし、それだけではありません。食品中の酵素は予め栄養素を分解しておくことで、食べた人の消化吸収を助けるといった働きをするものもあります。これは薬品では難しそうですね。

また、酵素は特異的に反応を起こすものですから、必要な部分だけ化学反応を行わせることもできます。特定の部分だけ化学反応を起こしておくことで、全体の反応速度を上げることもできるんです。製造や加工のところでの時間が短縮したりできれば、効率的に生産することが可能になります。

化学物質を用いるわけではないので、より安全性が高いという事も挙げてよいでしょう。

こういった点は化学物質を用いた反応では難しいと考えられます。そういった意味でも、食品の加工で酵素を用いるには、それなりのメリットがあるわけですね。

もし、難点を挙げるとすれば、酵素という一括りの名称で書かれても、消費者にはどんな酵素を用いたのかが分からないというところでしょうか。

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