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18、オキシトシンの話

愛情ホルモン

見出しの言葉を見てほっこりされた方もいると思いますが、身体の中には幸せホルモンというような、ちょっとうれしくなるような別名を持つホルモンが存在しています。以前にここに書いたセロトニンやドパミンもその括りの中に入っているものです。オキシトシンもその一つで、こちらは愛情ホルモンといった表現がされています。そしてこれら3つはいずれも神経伝達物質という側面を持っています。脳の中で働くから、気分が良くなったり幸せを感じたりするんですね。

オキシトシンは上に書いた通り脳の中での神経伝達物質としての働きがある一方で、末梢組織で働くホルモンとしての作用も持っています。末梢組織での働きを見ながら、神経伝達物質としての働きなどを取り上げることにします。

出産に関わるホルモン

オキシトシンは出産に関わるホルモンとして有名ですね。どのように働くかというと、子宮を収縮させて分娩しやすくさせるという働きです。オキシトシンという名前自体がクイックバース、サッサと産んでしまうというような意味の言葉だそうですから、母体の負担を減らす意味もあるんでしょうね。

出産時もそうですが、分娩後の子育ての間にもオキシトシンが活躍します。乳腺を刺激して、授乳が出来るようにします。そして、赤ん坊が母親の乳首を吸うことが刺激になって視床下部のオキシトシン産生ニューロンが興奮し、オキシトシンを分泌します。この働きによって授乳が可能になるんです。

さて、子育て中のご両親はとても苦労が多いのですが、とくに母親の負担は大変です。しかしオキシトシンはこういった授乳の時期にも、分泌が活発になっています。それに、本来オキシトシン自体が「うれしい」とか「楽しい」、「気持ちいい」と感じたときに脳でつくられるホルモンですから、子育ての大変な時期を乗り越えることが出来るのでしょうね。

さて、オキシトシンは脳の視床下部でつくられる神経伝達物質でもありますから、心と体にいろいろな影響を与えます。その中にはストレスに強くなるとか、不安な気持ちが安定して和らぐ、痛みが和らぐなどといった働きが認められています。愛情を育み親子の絆を強くするのも、オキシトシンの大切な働きです。

この、親子の絆が育まれることについて、動物を使った実験があります。それによると、オキシトシンは母性行動が形作られるうえでも重要な役割を果たしていることが分かってきています。マウスを使った実験では、オキシトシンやオキシトシン受容体が働かなくなった状態では、母乳が出なくなったり、母性行動が少なくなったり、そんなデータが報告されています。

さらに、オキシトシンは親子関係では相互に作用することが分かっていて、母親だけでなく子供の側もオキシトシンが分泌されているといいます。母子が相互に顔を見つめ合ったりしている時、赤ん坊の心拍数は安定したリラックス状態になっており、まさにその時に脳からオキシトシンが分泌されます。そしてお互いにやさしい、幸せな気持ちになるんですね。

こうしてオキシトシンは愛情を深めて成長を促すのみならず、両者のストレスを弱めたり 情緒を安定させたりといった効果をもたらします。こういったす、ストレスを弱める働きから、オキシトシンには抗ストレス作用や抗うつ作用があるとされています。

実際に母と子の関係を取り上げてみると、母乳で育てることによって母親の母性行動が増えたり、ストレスが減って気持ちが安定した結果として血圧が下がったりするなど、健康面でもメリットがあります。


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