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28、甲状腺ホルモンとTSHの話

TSHとT3、T4

医療の世界には長い名前がたくさん存在しています。それをきちんと全部書いたり話したりするとまどろっこしくなるので、普段は言葉を詰めて短くするか、または略語にしてしまうか、そんな方法を使っています。TSHもその一つです。TSHの正式な名前は「甲状腺刺激ホルモン」なのですが、これも長いのでTSHと略した名前を使っています。

TSHは人間ののどの辺りにある甲状腺という臓器に働きかけるホルモンで、甲状腺から分泌されるホルモンの量をコントロールする働きがあります。そしてTSH自体は脳下垂体の前葉いう部分で作られて分泌される糖蛋白ホルモンの一種で、TSH自体もTRHという別のホルモンによって調節されています。

TSH は甲状腺刺激ホルモンという名前ですが、別に甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンをどんどん分泌させるのが役目という訳ではありません。甲状腺から分泌されるホルモンは T3 とT4 がありますが、この両者の分泌を調節するというのが役目で、甲状腺ホルモンが少なければTSHが増えて T3 や T4 分泌を促し、これが多ければ分泌を抑制する働きです。分泌抑制もTSHの量が減少することでT3 や T4 の分泌を減らすという方法を取ります。

T3 と T4 はどう違うんだという疑問が湧くと思いますが、分子構造として持っているヨウ素の数の違いです。T3 は3つで T4 は4つという、ごく単純な名前の付け方のようですが、T4 はチロキシン(またはサイロキシン)とよばれ、T3 は取りヨードチロキシン(またはサイロキシン)という名前が付いています。しかしこれらも T4 や T3 といった略語で呼ばれるのが一般的です。

そしてこの両者、血液中ではサイロキシン結合タンパク(TBG)というタンパク質と結合していて、この状態ではその働きを実行することはありません。それに対して、FT3 とか
FT4 とかいう名前の状態で存在しているものもあります。これらのFはフリー(遊離状態)という意味をもっていて、TBGと結合していないので自由にその働きを発揮できる状態にあります。実際に甲状腺ホルモンとして働いているのはこのFが付いた方です。

実際に甲状腺ホルモンとして働いている方が重要ですから、甲状腺ホルモンの血中濃度を測定する場合は、FT3 や FT4 の方を測定するのが一般的です。これらを測定して甲状腺機能がどのような状態かを調べて、必要に応じて追加の検査を行なったりしながら病名がつき、治療を受けることになります。

甲状腺機能がハッキリと異常であることが分かるような場合は、FT3、FT4 を測定することで甲状腺ホルモンの過不足を判断することが出来ます。しかし甲状腺機能異常が軽度の場合は、FT3、FT4の値が異常になるよりも前に TSH の方が早く基準値範囲を外れていきます。つまり、TSH を測定すれば甲状腺ホルモン分泌量の過不足が分かるというわけですね。したがって、なるべく早く甲状腺機能に異常があるかどうか見つける、言い換えれば軽度の段階で見つけるためには、TSH を測定する必要があるということですね。


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