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野田洋次郎らしさが炸裂した「すずめ feat.十明」

「自室でイヤフォンなのにこの音の広がりは何」
すずめを聴きながら私がiPhoneに入力したメモ。どこか耳馴染みがあるような文章。絶対何かに影響を受けている、と考えた結果が

この宇宙が今まで観てきた悲しみや痛みのすべてを
知ってるかのような君のその涙はなに
MAKAFUKA / RADWIMPS

生活の中に染み込んでいる私の原点。RADWIMPS。


『FOREVER IN THE DAZE TOUR 2021-2022』を今年1月末に完走し、3月には映画『余命10年』のサントラを発売。それ以降、「人間ごっこ」の配信リリースはあったが、鳴りを潜めていたRADWIMPS。
上記ツアーにて、これからがっつり制作なのでしばらく潜りますと話していたが、思った以上に潜っていた。ライブの知らせなし、夏フェス出演なし、新譜もなし。

そんななかでひっそりと囁かれていた(もはやただの願望でもあった)のが、

「新海誠最新作で3度目のタッグが実現するのでは」

『君の名は。』『天気の子』で劇伴を務め、楽曲を提供しまくった彼らのことだ。今も映画用に楽曲を作りまくっているのでは。公開は秋でもうそんなに遠くない、それなら夏フェスに出なかったのも辻褄が合う。無理やり自分を納得させるための半ば言い訳じみたこの考えが、ついに現実となった。

映画公開に先立ち先行配信された「すずめ feat.十明」
アーティスト発表前から予告等で使われていたため、ネット上では誰が歌っているのか今回は誰が音楽で関わるのかと意見が飛び交っていた。
野田洋次郎の匂いがぷんぷんするぞ~と思いながら公式発表を待っていた皆さん、やっぱりあの言い回しは洋次郎でしたね。

すずめを聴いて真っ先に感じたのは、冒頭に書いたようなとんでもない音の広がり。映画館かと錯覚するほどの音の立体感。これを劇場の音響で、しかも素晴らしい映像と共に聴いたらどうなっちゃうの~、と先の自分の心配をした。楽しみより心配が先立つ。

ウマ娘にも携わる世界的作曲家・陣内一真さんを迎えたことでRADWIMPSは更なる新境地へと行き着いた。行き着いた、というより陣内さんとRADWIMPSと新海誠が新たなエンタメを生み出した、といったところか。

その盤石な製作陣を抑えても本作で見逃せないのが、主題歌でボーカルを担当している十明
惚れ惚れするほどの透明感ある歌声。一切の邪念を感じさせないその声は、もはや無感情ととれるほどに澄んでいる。息遣いすら作品になり、消え入りそうだが強い意志を伴う声は神秘的だ。彼女は歌手として歌っているのか、語部として言葉を紡いでいるのか。聴いている私たちの言葉と音楽の境界を曖昧にさせる。

最初の”るるーる”で心掴まれる。いや、それより早い。十明が息を吸い込む音で、こちらの呼吸の主導権も握られる。歌声のバックで太鼓ががどん、と鳴るたびに鳥肌が立つ。この時点で呼吸も鼓動も感じさせる壮大さ。

“なんで泣いてるのと聞かれ答えれる”からの盛り上がりは言うまでもないが、“君の手に触れた時にだけ”からもう1段ギアを上げてくるのがたまらない。ボーカルの盛り上がりを演奏がしっかりと支えている。

その後はあえてボーカルだけというシンプルな構成で、単体で聴くからこその美しさが際立つ。曲を通して、余計な音が一切ない。

ラスサビ前の間奏部分の電子音。「SUMMER DAZE」「人間ごっこ」の既発曲で見せてきたエレクトリックなサウンドを持て余すことなく使う。
話すと長くなるので一文におさめるが、RADWIMPSの新たな音楽への貪欲さと自由さが大好きだ。

AメロBメロとはっきり分かれていないこの曲で、“なんで泣いてるのと聞かれ答えれる”のいわゆるサビがとりわけ印象深いのはなぜか。この部分は音がとても流動的だからではないか。
他の箇所では太鼓や息遣いをはじめ断続的な音でインパクトがあるが、サビは流れるように声も楽器も鳴り続ける。抑揚を抑え気味にし、120%をずっと維持しているような。

そんなこの曲の最後、唐突にして一瞬、されど絶大な存在感を示す洋次郎まで堪能して聴いていただきたい。

映画鑑賞後、また捉え方が変わるのだろう。解釈がどんどん揺らいでいく感覚を早く味わいたい。公開が待ち遠しい。試写会当たりますように。


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