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ワクワクする未来は、新たな価値観とともにつくられていく

老後2000万円問題が取りざたされて、ちょうど5年が過ぎようとしている。
円安が進む昨今、4000万円は必要という声も聞かれ、数字ばかりが独り歩きしているようにも感じられる。

不安を煽られて通帳の残高ばかり気にして、今を生きることができなかったとしたら、何のための人生なのか分からなくなってしまう。
何故そんな言い方になるかというと、父親の最晩年の姿がまさにそんな姿だったからかもしれない。

現役時代は風邪ひとつひかない健康体だった父も、寄る年波には勝てず最期は寝たきりで酸素吸入が必要な身体になってしまった。

そんな状態になってから、
「本当は○○に行きたかった」
「○○を食べたかった」と、もっと元気な時だったら、簡単に叶う希望を口にし始めた。

私は、「何で今になって言い出すの。そんなのいくらでも食べられたし、いつでも行けたでしょうに」と、内心そう思いながらも、寝たきりの父を車いすに乗せて、酸素吸入器と予備のボンベを何本か車に乗せて(本当は実現不可能)、、、と思いを巡らせたけれど長距離移動はどう考えても難しくて、叶えてあげられないまま父はこの世を去ってしまった。

当時、金利が限りなく0%に近づいていき、更には年金も目減りしていったのだから、通帳の残高が気になるのは理解できる。
けれども、後になって分かったことだが、もっと自分のことにお金を使ってもよかったのにと、思えるくらいの蓄えは残していたのだった。
取り越し苦労といえばそれまでだが、将来へお金の不安というものは、個人のささやかな楽しみさえも封印してしまう程の威力があることなのかもしれない。

統計によればこの30年ほど、サラリーマンの給与は横ばいだという。だからなのか、国をあげての投資・投機ブームに沸いている。
そして高校では成年年齢の引き下げや、元々金融教育が遅れていたこともあって、2022年から金融教育が必須化された。それに追従するように、小学校・中学校に向けて、それぞれの段階に応じた金融ガイドや指導計画などが金融庁や金融広報中央委員会のホームページに掲載されている。
書店に行けば、小学生向けに「お金」や「経済」について書かれた色とりどりの書籍がたくさん並んでいる。

金融広報中央委員会では、金融教育の定義をこう示している。
「お金や金融のさまざまな働きを理解し、それを通じて自分の暮らしや社会について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて、主体的に行動できる態度を養う教育」だそうた。


「生き方」「価値観」
「豊かな生活」「よりよい社会」


こうした言葉が具体的にどういうことを現わすのか。今の教育現場に解はあるのだろうか。


国立青少年教育振興機関による調査では、日本の高校生は仕事に対するイメージが「生活のため」との回答が7割を超え、「仕事は楽しい」と回答したのは2割に満たなかったそうだ。
勿論、多くの高校生にとって就労経験といったらアルバイトしかないのだろうから、これらは単なる仕事に対するイメージに過ぎないのだろう。
けれども、同様のアンケートを行った米国、中国、韓国の学生とは、かけ離れた結果だったという。それは、身近な大人たちの生き様が、そんな印象を与えてしまっている現われでもあるのかもしれない。


折しも7月3日から、新しい紙幣が流通を開始する。

新一万円札には渋沢栄一先生(あえてそう呼ばせていただきます)の肖像画が描かれる。

時代の変革期に、日本のために、人びとのために、将来を見据えて奔走され今の経済の礎を築いてくださった。
現代の私たちは、かつて渋沢先生が思い描いた未来の社会を築けているのだろうか。
今の私たちの価値観は、これから先の日本を、世界をつくっていくに足るものとなっているだろうか。

お金を払うことで手に入る「物」も「サービス」も、元は「誰かの役に立つために」という「人の思い」から生み出されているものだ。

お金は、そうした「物」や「サービス」と交換する時に、今の社会システム上必要とされている交換券(権)にすぎない。

「自分の資産さえ増えればいい」と、
数字を増やすことばかりに関心が向いて
「自分さえ良ければいい」といった考え方に、子どもたちが突き進んでいかないことを願うばかりだ。

子どもたちは、大人たちの背中を見て育っていくのだから。

新紙幣の流通とともに、経済についてあらためて考える契機になるだろう。それは、お金さえあれば幸せになれるといった、お金ありきの思考、拝金主義からの卒業だ。


今、日本は物質的に豊かになったし、何より平和だ。
空から爆弾が降ってくる恐怖に怯えることはない。
そんな日本は奇蹟であり、その秘訣を知りたいと、世界中の平和活動家たちは関心を寄せているそうだ。

けれども現実の日本社会では多くの人が心を病み、生きる意味を見いだせずにいる。少子化が進んでいるにもかかわらず、子どもの死因の第一位が自殺だという現実がある。


これまでの価値観の延長線上に、未来はないことを教えてくれているのではないだろうか。


「幸せとは何か」
「ほんとうの豊かさとは」
「働くとはどういうことなのか」


これまで漠然と捉えていたことに解を出して、
それを私たち一人ひとりが自分の生活の中で現わしていくことが求められているのではないだろうか。

その姿を見て、新たな価値観を手にした子どもたちは、ワクワクしながら夢や希望を思い描いて、一人ひとりの人生を切り開いていくことができる。


そんな時代の転換期に今、私たちはい立っているー、
そう思いませんか。


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