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映画『THE BEATLES GET BACK:THE ROOFTOP CONCERT』ノート

監督 ピーター・ジャクソン
 
 2月13日、自宅から車で1時間ちょっとのところにあるシネコンでこのドキュメンタリー映画を観た。2月9日~13日に全国39か所の映画館で限定公開されたこの映画は、アップル・コア本社があるロンドンのセヴィルロウビルの屋上で行われた伝説的なルーフトップ・コンサートの模様を記録した映画だ。
 思わず指先(控えめでしょう?)がリズムを刻み、終わったときには感動して拍手をしてしまった。
 この映画は、単なる演奏の場面だけではなく、通りを挟んだ向いのビルの屋上に1台、通りに3台のカメラ、ビルの入口の隠しカメラなどなどあちこちにカメラを設置して、この予告なしの演奏会に驚いて集まってきた人たちへのインタビューや、騒音の苦情が殺到しており、治安を乱している騒音だとして取り締まりにやってきたスコットランドヤードの警察官の当惑気味で、かつ威厳を保とうとする高圧的な表情や言葉も捉えられている。ちなみに屋上の演奏会場には固定や移動カメラ合計5台があった。
 
 屋上のカメラは、『Don’t Let Me Down』の2テイク目の演奏の時に、屋上に上がってきて演奏を中止させようとする二人の警察官とスタッフのやり取りも映し撮っている。
 このフィルムを見て、ビートルズは思った通り、稀代のライヴバンド且つコーラスグループだと再確認した。まさにライヴバンドとして「GET BACK」=復活したのがこのルーフトップ・コンサートだったのだ。
 
 ポールのジャケット姿(1月だから寒かったのだろう。他の3人はコートを着ている)の落ち着いた佇まいの中で表情を余り変えずに、時々シャウトする歌いっぷり。ジョンは、全身を揺すり感情をむき出しにして演奏を楽しんでいる姿――私には音にはしゃぐ子どものように見えた。後ろでフェンダー・テレキャスターを抱え、目立たず、時には耳慣れたリフを弾き、コーラスを重ねるジョージ。ギターやベースに合わせてドラムスを正確なリズムで刻みながら存在感のある多彩な音を繰り出すリンゴ。この4人にキーボードのビリー・プレストンがしゃれたアドリブやリズムを重ねる。映画には余り映っていなかったが、これまた楽しそうに弾いているのが嬉しい。
 
 曲目を記憶に辿ってリストアップすると、(画面と音に熱中して、メモをすることも忘れていた)、ルーフトップでは最初に『Get Back』、『Don’t Let Me Down』(ジョンが歌詞を間違えたか)、『I’ve Got a Feeling』(間を置いてもう1回演奏)、『One After 909』、『Dig A Pony』、『Don’t Let Me Down』(2回目の演奏)、『Get Back』(なんと3回目の演奏)で終わった。
このあとアコースティックバージョンを録ろうとスタジオに入って、確か『Two Of Us』、『The Long And Winding Road』、『Let It Be』で終わった。この時、ジョンがあぐらをかいてギターを弾きながら、いたずらっ子のような顔をして歌詞の口パクをずっとしていたのが印象に残った。
 
 帰りの車の中で『LET IT BE~NAKED』のアルバムを聴いたので、少し記憶が混乱しているかも知れない。間違っていたら、どなたか訂正してほしい。
 
(以下余談)
 昭和49年のことだからもう50年近く昔になるが、学生時代に九州の西の外れの県都で仲間とロックバンドをしていて、ある大手音楽関係企業のコンテストに出て賞をいただいたもので、某テレビ局のプロデューサーの発案で自社ビルの屋上で演奏会をしようということになった。当然そのプロデューサーの頭の中にはビートルズのルーフトップ・コンサートがあったはずだ。
 セッティングが終わって、私たちは気分よくオリジナルの1曲目を演奏し始めた。屋外のため音は空に吸い込まれてしまい、モニターはあったはずだが、自分達の耳には音があまり聞こえずボリュームをさらに上げた。
 1曲目が終わった時、慌てた表情で屋上に駆け上がってきた人が、プロデューサーに言っているのが私たちにも聞こえた。その地の方言で言えば、「あの音はおまえんとこか! なんばしよっとか!」という抗議電話が殺到しているとのこと。想像力が若干欠けていたそのプロデューサーは速やかに中止を宣言し、このコンサートはあえなく1曲で終わった次第。警察こそ来なかったが、あのまま続けていれば、県警本部も近かったので、きっと誰か一人くらいは以上聴取されていたはずだ。ルーフトップ・コンサートに魅了され、真似をしようとした青春の一コマであった。
 

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