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2024.6.6 アルバム制作 - 「Gioiello」

タイトルはイタリア語で「宝石」です。毒を軸に置く私が宝石をテーマに歌う日が来るなんて。

前作で楽曲提供をして頂いたFabio Liberatoriさんの曲。実は前作コラボの為にお会いした際、いくつかのデモを聴かせて頂き、気に入った3曲を既に提供してもらっていた。その内の1曲に日本語歌詞を書き、それをイタリア語歌詞にしてもらい「Dovunque sarai」が誕生した。他2曲もいつか何かで形にしたいとずっと思っていた。1曲は言葉にすると陳腐だが空間系というか、何らか映像や絵、ストーリーとのコラボで生かされそうな曲。もう1曲は優しい印象の曲で、テーマが決まればすぐにでも発展しそうなメロディだった。

少し話が遠回りするのだが、今年2月イタリアから旅行会社の視察ツアーがあり、3日間かけて同行した。そこで改めてイタリアの文化や言語の話で盛り上がった。その中で印象的だったのは、言葉の持つ意味についての会話だった。
情熱と訳される「passione」(英語ではパッションですね)、これは単純に日本語の情熱だけではなく、情熱を持って最後までやり遂げるという意志が含まれる、ということは「覚悟」や「責任」とも言えるのではないかという事。
そして、愛や愛する人として訳される「amore」(アモーレ)、日本で受け取る印象としては恋愛対象者への愛という意味が強いように思う。しかしこれも、単に恋愛感情を持つ相手だけではなく、もっと広義での愛、家族や友人や仕事仲間など、関係する人間に対しての「愛」を意味するという事。

この話を後にゆっくり反芻した時、Fabioさんから提供してもらった優しい印象の曲を改めて聴き、4年前に他界した母に対しての「amore」という感情をベースにして歌詞を書きたいと、ふっと感じた。私にとって大きな意味での愛を日本語で歌うにはどうしてもわざとらしくなる傾向があり、わざとらしくならないように書こうとすると今度は分かり辛い言葉選びになってしまう。イタリア語だったらこの感情を表現する言語として最適なのではないかと感じた。これこそが完璧なタイミング。

そしてアレンジをお願いする人は即決定した。アニメサントラの現場で良くご一緒していたバイオリンの伊藤彩さん。
「邪血の少女」のオンラインライブの際、待ち時間で色々会話し、いつか私の楽曲で弾いてもらいたい、という事をご本人に伝えていた。特にその時期は女性だけでチームを組みたい気持ちが強かった。それは自身がこの業界なり日本の社会において、男社会が率先する中での息苦しさを感じ続けており、一度そこから抜け出したいと思っていたから。女という性別で生きて来た人間にしか分からない真綿で首を絞められるようなジワジワとしたしんどさを超えたところで、作品を作りたいと思っていた時期だった。
そこから数年経ってしまったが、弦カルテットしか私の頭の中には鳴っておらず、真っ先に彩さんの顔が浮かんだ。現場で良くお会いしていたとは言え、突然の依頼でしかも弦カルアレンジまで振ってしまって、彩さんからも「大丈夫かな!?」とも言われたが、もう思いついた事をやると決めたのだ。間違う訳がない。(謎の自信)

更には私の書いた日本語の散文詩をイタリア語に訳して、メロディに歌詞として載せるという大変な作業が。これはFabioさん側で信頼するSaraさんにお願いしてもらい、補足説明を加えた散文詩をお渡しした。
実は最初に依頼しようと思っていた候補者がいたのだが、日本語をイタリア語の美しい詩に訳せたとしても、メロディの音数に言葉を載せて聴き心地を良くする、という作業が専門分野になるので、難しいのではないかという話になった。
最初の候補者に予定を合わせていた為、かなりスケジュールがずれ込んでしまい、Saraさんに依頼した時にはもうレコーディングまで1ヶ月半という状況だった。出来た先からイタリア語の歌詞をもらってはいたものの、なんと最後のパートはレコーディング前日に届き練習時間は数時間しかなかった。ただ、海外で一番多く訪れているのがイタリアであり、多く聞いている外国語の上位に入るのもイタリア語なので、コツは徐々に掴めて来ているはずである。と!信じて!

そして迎えたレコーディング当日。最初は弦カルの皆様と違うブースで歌っていたのだが、どうしてもヘッドフォンからだけの音だと情報量が足りない。早々に弦カル部屋に移動し同じ空間で歌ってみたところ、もう…これだよね。音の馴染みもそうだし、同じ空間にいる事によって呼吸感を合わせる事が出来る。その空間の微細な空気の揺れのような情報を感覚として受けながら歌っているのだと思う。
何よりアレンジが美しくて楽曲がまさに宝石のように輝いていき、演奏者の皆様も細かいリズムの部分や弾き方までもこだわりを持って演奏してくださり、本当に幸せな時間であった。私の歌だけがギリギリだったのが悔やまれるが、この楽曲に関してはそれくらい真っさらで真っ直ぐに歌ってこそ合うとも思うので、結果的にはギリギリで良かったのかもしれない。

左から、伊藤彩さん、地行美穂さん、吉田篤貴さん、飯島奏人さん

何よりFabioさんをご紹介くださった井谷直義さん、実はこのアルバム制作でも何度か登場しているイタリア在住の日本人で、バイオリニスト益子侑さんカメラマン菅野一哉さん、そして前出のイタリアからの旅行会社をご紹介くださり、更には今回私の散文詩をイタリア語に翻訳もしてくださった。加えて最近使用しているアー写のスチールカメラマンEmiさんもご紹介頂いた。なんたる大活躍!笑
こうして生まれた作品達をよりたくさんの方々にお届けする事で、感謝の意を表せたら良いなと思う。

直義さんとFabioさん

それにしても。近い将来ローマを訪れて、Fabioさんとまたお会いしたいものです。

2019年にお会いした時。


◆Fabio Liberatori
イタリアの劇伴をお楽しみあれ。

◆伊藤彩
素敵な作品達!

◆アルバム制作、まとめ読み

◆ちょこっとメイキング
毎週日曜、更新中


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