人のちから。　映画「最強のふたり」を観て

2011年公開のフランス映画「最強のふたり(untouchable)」は、実話をベースにしている。

最後に2011年当時の本人たちの映像も出てくる。

あらすじ

事故で全身まひとなり車いす生活を送る富豪フィリップが、介護士面接にやってきて、開口一番「不採用のサインをくれ」と切り出した場違いな黒人青年ドリスに興味を持ち、採用する。

富豪と貧困層の移民という、境遇があまりに違うふたりは、衝突もありながら、ふたりともスピード狂という点で気が合って友情を育んでいく。

ドリスは、がさつで下品だけれど根は実直で、たぶんフィリップが彼を気に入ったのは、障がい者だとか金持ちだからとかで、彼の顔色をうかがうことなく、対等な態度だったところではないかと思う。そして、底抜けに明るいところも。笑いって、思いのほかパワーがある。

実際のドリスは黒人ではないけど、この役者の演技はインパクトが強く、見ていてフィリップが障がい者であることを忘れかけた。首から下が動かないなんて想像以上のストレスだろうに、それよりドリスに振りまわされているほうが印象的だった。楽しそうでもあったから。

単に給付金が欲しかったから面接に来たドリスは、介護士経験ゼロでもこの仕事をやっていけたのは、ひとの世話を焼くことに免役があったからだと思う。複雑な家庭で、反抗期の弟や妹らの面倒をみてるから。とはいえ、さすがに下の世話は大変だったに違いない..。

フィリップは最愛の妻を不治の病で亡くした後、女性と文通はしていたけど会う予定はなかった。けど、ドリスの後押しで結局会い、後に再婚して子どもも儲けた。映画の中では、会うところまでが描かれている。

フィリップとの出会いで、ドリスは興味がなかったアートで才能が開花し、後にビジネスで成功したようだ。

人生ってわからないものだ。

ふたりは、互いの影響が変化のきっかけになった。

ちなみに、この映画は、障害者、富裕層、貧困層の移民、フィリップの養女やドリスの弟妹の若年層、同性カップル、中年カップル等々、登場人物の層が偏っていなくてそこも興味深かった。