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公募情報から取り組むべき案件を抽出するためのプロセスを解説します

多くのNPO団体は、お付き合いのある行政担当者からの紹介で公募案件に応募することが多いと思います。他方、新しい案件を開拓していく場合は、公募情報から自団体にマッチする案件を抽出する作業が必要となります。

毎日、いろんな自治体から新しい案件が続々と公募されていますので、何をもって取り組むべき案件を選定するのか、迷うことも多いでしょう。

以下では、江東区青少年相談事業運営プロポーザルを題材に、案件としての取組可否をどのように判断すべきか、見てみたいと思います。

■案件概要

現在、江東区がR3年4月から、青少年相談事業(相談業務、インテーク会議、居場所運営、講演会・交流会)の運営者を募集しています。
ここでいう青少年は、主に社会生活が困難な若者(具体的には引きこもり)を指しているようです。

【江東区青少年相談事業運営受託候補者募集】
予算上限:780万円
実施場所:江東区役所、江東区青少年交流プラザ、区内公共施設
参加資格:東京都若者社会参加応援事業登録団体(NPO等)
公募スケジュール:参加表明1/22〆、提案書1/29〆
https://www.city.koto.lg.jp/105010/kodomo/seshonen/seishonensoudan_proposal.html

■案件分析

案件検討にあたり何を調べていけばいいのでしょうか。

以下では、案件を検討するかどうか判断するために行う、超ざっくりとした競合分析と採算性分析のイメージをお伝えします。

【競合分析】

過去、江東区から同様の事業が公募されている形跡がないので、おそらく本事業は新規採択案件であり、業務単体で見たときに、先行者はいないと思います。

他方、実施場所に含まれている青少年交流プラザは、H28~R3まで某企業が指定管理者として運営しています。指定管理者の期限がR3末なので、R3年度中に青少年交流プラザの指定管理の次期公募が始まり、次期事業の業務範囲に、おそらく上記の青少年の相談事業や居場所運営事業が追加されるのではないかと思います。つまり、現在の指定管理者は事前に区から相談を受けている可能性が高く、競合であると考えられます。

現指定管理者のHPによると、未就学児~小学生向けの施設運営に強みを持っているようで、若者支援にはあまり経験がないようです。

➡先行事業者が有利な市場だが、若者支援に強みがある場合は勝てる可能性はあるかも?


【採算性分析】

業務ボリュームと予算感についても見てみましょう。仕様書から、実稼働時間として下記の時間が読み取れます。

・相談事業:200回×4時間=800時間
・電話相談:50回×2時間=100時間
・訪問相談:15回×2時間=30時間
・インテーク会議:20回×2時間=40時間
・居場所運営:100回×3時間=300時間
・講演会:年3回

準備時間(1.2倍)を含めると作業時間は1500時間、人件費単価5,000円/人・時、とすると、すでに750万円。消費税を入れると予算オーバーです。間接費(人件費の1~3割)を載せる余裕もありません。

➡この事業単体で考えると、そこまでおいしい事業ではありません。江東区内ですでに類似の事業を行っていて効率化が可能な団体、またはR4年度以降の指定管理者との抱き合わせで収益化を狙っている場合には、検討の俎上に乗るかもしれませんね。


ということで、①若者支援に強みがあり、②江東区内で類似事業実績があるor③令和4年度以降の指定管理者で収益化を見込める 場合に、本件を真剣に考えてみる価値があると思います。


■最後に

なお、採算的には厳しいけど、テーマ的にどうしてもいっちょ噛みしておきたい、という場合もあると思います。江東区内で若者支援に乗り出したくて、区へのアプローチを考えていた場合などです。その場合は、現在の指定管理者と一緒に提案できないか検討するのも一案です。

現指定管理者は若者支援はそこまで強くなさそうな反面、現場にはすでに人を張り付けており、採算面ではあまりハードルにならない可能性があります。

現場対応などお金がかかる部分は現指定管理者に任せ、若者支援のノウハウ共有や電話相談のみを自団体で請け負うことで、相互にwin-winの関係を築きつつ、費用を抑えながら実績を積んでいくことも考えられますね。

今後、積極的に行政からの受託を狙っていく場合には、上記のようなプロセスを踏みながら効率的に対応すべき案件を絞り込んでいくことが大切だと思います。

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