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地方に住み、自治体と働くということ⑪ ~地域のブレーンを育成するには

「なぜ地方自治体は全国で同じことをやるのか〜皆で同じことをやると確実に失敗するメカニズム〜」という記事が、最近の自分の中でのホットトピックです。

これを読んでいて感じるのは、「地域には、自治体のブレーンが少ない」という事実。

まちづくり計画などは、外部のシンクタンクやコンサル会社に発注することが多いのですが、これが曲者。

政府が全国に普及させたい制度などを、補助金を出して政策的に誘導するのですが、道路や公共施設などはイニシャルコストを下げるために補助金目的でオーバースペックのものを整備した結果、ランニングコストが増えてしまったなんて話も聞きます。
まだハード整備はましな方で、自治体の計画づくりそのものにも補助金が入ったりする場合は、政策決定プロセスをゆがめかねない深刻な状態がしばしば発生します。

自治体からの委託で生きているコンサルは、これらの補助金情報をいち早く察知し、「この案件で補助金とりましょう!」なんてけしかける。
すると、自治体もその気になる。で、案件化してコンサルが受託し、地域のディープな情報には触れられない「金太郎あめ」的な計画ができ、コンサルだけが設けていく。
(もちろん、そうではない良心の塊のコンサルも多いことは事実です)

地域の問題を地域内で考え、解決できる地場の民間組織(地域ブレーン)を作る取り組み、真剣に考えたいとダメだなこりゃ、と思うのです。

行政主導ではうまくいかない

行政だけで解決できない課題を、地域の主要なステークホルダーが集まって話し合い、事業化進めましょう、という「地域プラットフォーム」という政策用語も花盛りですが、これは行政主導だと失敗します。なぜなら、参加者は行政から呼ばれたら、最後は行政が責任もってやるんだろうと思うじゃないですか。
でも、行政側は「みんなで一緒にやろうね。」というつもりで場を設定していて、すごいボタンの掛け違いが起こっていることに気づかない。
言い出しっぺが一番汗をかかなければいけないことや、人に動いてもらうためには具体的なインセンティブが必要なことを、時々忘れがちなのも要因です。

こういう会をセットするときは、課題認識や未来を共有できる地域のプレイヤーを探し、その人たちとの連携体制をとること。
もっと言えば、その人たちを応援する方法を考えることです。

共通の課題認識や未来イメージを持っている人が、地域のブレーンとして主体的に活躍できる素地を整えることが大切です。

お金では人はついてこない

活躍できる素地を整えるってどういうこと?、活動費を支援すればいいの?という声が聞こえてきそうですが、必要なのはお金ではないので、間違えないでいただきたいなと。

以前、障害者雇用×有機農業に取り組むNPOから相談を受けたことがあります。そのNPOは某財団から「数億円の補助金をあげるから障害者が働くカフェを作って欲しい」と言われ、カフェを開くべきかどうか迷っているのでアドバイスが欲しいとのこと。
NPOにはカフェ運営のノウハウも、現地に人を割くマンパワーもなく、超田舎の立地だったので営業黒字転換の勝算もなく。ないないづくし。
普通ならなんでこんな状況の団体に声をかけたのか不思議に思うくらいです。

当然、建物をゼロ円で作れたとして、オペレーションで黒字転換しなければ人件費も賄えず、最悪店舗を閉じたとしても固定資産税が垂れ流しになってしまう。要は、負債を抱えるだけです。
力を入れて取り組むつもりがなく、リスクを飲めないないならやめたほうがいい、と伝えました。

結局、農業×カフェの可能性を追求したい、ということで、補助金を断ったうえで、近くの自然派カフェオーナーと連携して障害のあるスタッフを雇ってもらったり、農園で作った野菜を取り扱っていただくことで決着したようです。

できることをから小さく始めて、見込みがあれば大きくする。
あるべきビジネスの姿に落ち着いてほっとした経験があります。

おそらくこの時の財団の補助金は、ローランズ原宿のカフェを横展開するつもりだったのでしょう。原宿という立地で、当初からビジネスモデルを練り上げて店舗を作って成功させたローランズと、今回の地方都市のNPOとでは、ありとあらゆる条件が違うのに。

お金の出し手は、ともすると札束で人の心が動くと思ってる節があるのではないか、と思った出来事です。

地域内に、志を共にするブレーンがいるか

先の財団のような場面に出くわすと、たとえ本人はいいことしてるつもりでも、心の根っこにある「お金が力だ」という思想が透けて見える気がしてしまい、残念な気持ちになります。

地域で志を持ってリスクを取り、社会課題の解決に本気で取り組もうとしている人を支えるには、お金だけでは到底足りません。人・もの・金・情報の絶妙なバランスの上に成り立っているので、どれか一つだけを支援しても、逆にバランスが崩れておかしくなってしまうことも。

それよりも、地域のプレイヤーと一緒になって知恵を出し合い、それぞれのできること・得意なことを持ち寄って、一緒になってトライ&エラーをする。新しいチャレンジを繰り返す。その中でお金が必要になったら、必要なだけの資金・予算・補助金を、プレイヤーと一緒に確保しにいく。

こういう関係が作れなければ、結局お金だけ引っ張ってきて、地域でできなくて、外のコンサルに依頼して、ノウハウも資金も地域にたまらない。。という悪循環に陥るのは目に見えています。

このような地域のプレイヤーをどうやって見つけ、ともに戦うブレーンを育成できるかが、今後の持続可能な地域づくりに必要なのだと思います。

地域にブレーンを作るために

地域にブレーン候補がどれだけいるのか、把握している自治体職員はほんの一部に限られるでしょう。
地域のプレイヤー側も、自治体に何ができて、どうやって連携できるのか。方法論もノウハウもなく、コンタクトを取ろうなんて思いもしないことでしょう。
両社が出会うためには、高いハードルがあるのです。

だからこそ、地域づくりの責を担う自治体の職員の方は、ぜひコンサルではなく地域のプレイヤーともっと話をしてほしいと思います。どんな人がブレーンとなってくれそうなのか、同じ志で課題解決に人生をかけてくれるのか、街に飛び出して話を聞いてほしいです。

私の大好きなTEDのスピーチに、「人を助けたいなら 黙って聞こう!」というものがあります。思い込みで支援することの危うさと、対話によるソリューションの力強さが、ユーモアたっぷりに語られています。

行政は、地域のプレイヤーと臆せずに腹を割って話し、それぞれが抱える悩みや難しさを共有し、互いの強みを活かし合う関係を作るべきではないでしょうか。

その先に、地域プレイヤーが自治体のブレーンとなって、地域の問題を自ら解決していく体制が整うのだと思います。

さいごに

全国には、地域プレイヤーがブレインとなって地域を盛り上げている事例がいくつもあります。
例えば、こゆ財団やオガール紫波などが有名でしょう。

これらの事例について、どのようなプロセスで地域ブレーンが生まれ、活躍するに至ったのか、おいおい紐解いていきたいと思います。


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