202010月3日の夢 心霊スポット

 到着地は田舎だった。
でかいリュックを背負い何か目的を持ってこの地までやってきた自分は、特別意識に残るような風景もない場所を歩く。
 歩行者も全く居ない。あるのは民家と、道路と黄金に輝いた畑。前回の夢の中とは違い、今回は何故此処にいるのか、この時点では不明瞭だった気がする。夢って結構な頻度でそんなものだとは思うけれど。
「これを持っていきなさい」
 何処から現れたのか、突然お婆さんに呼び止められ、手渡された物を受け取った。白い紙に黒いインクで沢山の漢字が書かれた、イメージとしては御札そのものであり、夢の中の自分もその認識でいた。その御札を見て、自分はこれから心霊スポットに行こうとしてる事を自覚したように思う。
 ひとつ、貰った御札には問題があった。非常にデカかったのだ。掌を広げて重ねても収まらない程広さと、伸ばしきった腕と同じくらいの高さ。後にこれを使う時が来るが、どうやって持ち運んでいたのかについては、RPGで背負った剣以外にも何本も持っている武器類をどうやって持ち歩いているのか考える並に不毛だと思う。これは夢なのだ。

 規格のデカさと言えば、もうひとつ。
その後、1人で彷徨いている大荷物の女と出会い、目的地を同じにしている事が分かると一緒に行動するようになった。駅まで戻り(恐らく夢の始まりはこの駅を出た所だったのだろう)、女は駅員と何かしらの交渉をし始める。その際の女の熱意たるや異常なものだった。身ぶり手振りとでかい声と、その猛る想いに涙まで流しテーブルに拳を叩きつけていた。あまりのオーバーリアクションに、ぶっちゃけこれだけでも充分に恐怖を感じた。鬼気迫るってこういうこと?
 駅員の対応も手慣れたもので、しかも二人は何度かこうやって話しているようだった。常連のような女の雰囲気に、あえて出し渋りをするかのような駅員の飄々とした態度。何かお金とか絡んでるのか知る術はないが、最終的には駅員が用意した様々なグッズを女は大荷物の中へ更に追加で突っ込んでいった。何でもそれは行き先で使う心霊グッズだという。駅ってこんなものまで扱ってるんですね。

 また時間は飛び、次は遂に心霊スポットまでやって来ていくらか進んでいるといった所から。
 さっきまでは確実に昼間だったが、今は深夜。結構は距離はある、真っ直ぐに伸びた並木道、というか林道そのものが心霊スポットのようで、光源は自分達以外には何もない。
 ここまでの道中で1人男がパーティに加わっていた。1人でこの地にやって来ていた所に出くわし、同行する事になった。RPGの如く仲間を増やしてはいるが、現実では多くの場合立ち入りを禁止されていたりする場所で、そうでなくとも深夜に見ず知らずの人と遭遇したからと言って気楽に声をかけることは、思わぬトラブルを生む原因になる場合がありますので絶対に真似しないで下さい。
 そんな感じで三人で林道を進む。一行の雰囲気は完全にYouTuberのそれ。道中にそれらしいお地蔵様があったりしたが、綺麗に掃除されてたり特別変な看板があったりもしない。因みに女が駅員から手に入れた心霊グッズはここまで一切使われていない。

 もうちょっとで林道も終わると言うところで、突然女が「足が全く動かない」とその場で倒れだした。数歩先を進んでいた自分はその呼び掛けに振り返り、女の側にいた男が手を貸そうと女に触れた瞬間、女の身体の表面が白く蠢くもので淡く光始めた。その光は点滅しており、蠢くものは所狭しと女の表面を駆け回った後、接触している手を伝って男の身体へと登っていった。男の身体は痙攣を始め、女に触れている腕以外が常軌を逸した運動に振り回された後、またその腕を伝い女へと還っていく。
 その反復が何度も行われている様を、自分はただその場で眺めていることしか出来ず、徐々に蠢くものの往復間隔が短くなっている事に気付いたのと同時に、男の身体が少しづつ女の身体へと取り込まれて始めた光景もって、遂にその足はこの場から逃げる事を思い出した。
 異常から距離を取ったとのも束の間、男の身体を喰らい尽くし、肥大化した女だったものが追いかけ始めてきた。とにかくこの林道を一刻も早く抜けなくては。その一心でひたすらに駆け、徐々に鬱蒼とした木々には隙間が現れ、夜明けの光が差し込み始め、林道は並木道へと変わり、住宅地と人の気配を感じられた。
 もう木々はなくなり、辺りは黄金の畑が広がった。コンクリートへと変わった道の続く数百メートル先には小さな駅舎が建っていて、真っ赤な電車が停まっている。○○○○駅。漢字四文字の駅。もう少して逃げ切れる。そう思って体力が尽きかけた身体を奮発させる。その時。
「御札を出しな」
 その声にハッとて振り替えると、自分と女だったものの間に先程のお婆さんが女だったものに向かい合うように立ち塞がっており、その動きを何らかの方法で封じていた。「この時の為か」と良くわからない確信をした自分は急いで先程貰った御札を取り出し、女だったものに構える。そうすると目の前の異形は苦しむのうに身を捻らせ始め、白く発光していったと思うとその光は拡散し弾け飛び、その場には倒れた男と女が残されていた。
 

 先程の経験も覚めやらぬ中、自分は現地のカードショップで手持ちの品を買取りに出していた。引っ提げてきた荷物は「田舎ならちょっとは高く値が付くだろ」とこの時の為に持参してきたものばかりだったのだ。
「思ってたより金額ついたな」
 提示された査定結果に満足そうな完走を述べ、軽くなったリュックに膨らんだ財布をしまい、その店の中をだらだらと眺め始めた。

 その後、二人がどうなったのかは知らない。結局駅員から調達した心霊グッズは一切日の目を見ぬままだった。起きた怪異は何だったのか、お婆さんは何者だったのか、目的は済ませたと言わんばかりに、自分はさっさと次の遊びへと赴いた事、あらゆる謎は解明される事もないまま、僕は夢から目覚めた。

終わり。

(10/08追記)
ここまでお読み頂きありがとうございます。
ここでは、前回見た夢の考察を少しばかり書いてみようとおもいます。

前回の夢の舞台は九州でした。僕は九州地方へ行った事もなければ知人に九州出身者がいるわけでもありません。
これは恐らく、夢の中でも言っていたように僕が遊んでいる「駅メモ!」というゲームが、アイドル活動で佐賀県を復興しようと努力するアニメ「ゾンビランドサガ」とのコラボが発表されたのがきっかけでしょう。
佐賀県に何か知識があるわけでもない僕が夢の中でその名前を出さなかったのは、きっと曖昧さを持たせようとしたのではないかと思います。「九州のどこか」でなくても、ボロアパートや古びたゲームコーナー、横断橋がなければ渡るにも苦労する国道も、閉鎖された病院も、行きつけの居酒屋も、その大体はどの県にもあるものです。

入居候補のひとつ目のボロアパートに関しても、直近で連想出来るものを観ていました。
映画「事故物件」と、YouTubeチャンネル「ゾゾゾ」さんの長編動画です。
内容にはこの場では触れませんが、夢の中で住む場所を(探して)転々としたり、ワケ有りを匂わせる物件ばかりだったのはこれら二つに影響されたように思えます。心霊モノ好きなんですよねー。

そうそう、ゲームコーナーと言えば、「フォーンフォーファフォーン」って感じの救急車のサイレンのようなスペース系のBGMを出したクレーンゲームがあった気がするんですよね。今でも脳内に焼き付いているので同じものを動画サイトで探したんですが見付かりませんでした。曲名とか知らねぇ……
これじゃないですか?って分かる人居ましたら教えて下さい。

それでは今回はこの辺で。
クソ上司が夜の街頭の下褌一丁でスマホ弄る変態になってくれたので満足です。

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