撮影所のフィルター
「馬鹿、なんで今日、フィルターを交換したんだ!」
ADさんが先輩に叱られてた。
「明日、○○寺に納めれば良いと思いまして…」
「明日はロケだろ、寺に行く暇なんかない!」
「あ、そうですね」
撮影所の通気孔のフィルターを持ってもめてたので、ぼくが声をかけた。
「○○寺の住職なら親しいんで、ぼくが届けときましょうか?」
二人はこちらを見て、
「みぶさん、いいんですか?助かります」
というわけで、フィルターを持ち帰る。
その夜、悪夢にうなされて目を開けると部屋中に何十人もの人がいてこっちを見ていた。
こいつらは、一体…
翌朝、○○寺にフィルターを届けると、住職が
「撮影所には昔から大勢の亡者が通気孔を通って見学に来るもんじゃ。あんまり霊が増えると機器にトラブルを起こすんでな、日本映画の全盛期から霊のフィルターをうちで提供しとるんじゃよ。一晩、フィルターといたらあんたの寝床にもゾロゾロ出てきたじゃろ。大丈夫、これから供養してフィルターはお炊き上げしますでな」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?