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SCフライブルクを支えるベテラン選手たち FOKUS Bundesliga!!! #4

前書き Einleitung

2023/24シーズンのブンデスリーガ第34節ウニオン・ベルリン戦をもって、クリスティアン・シュトライヒ氏がSCフライブルクで最後の指揮を終えた。シュトライヒ氏は1995年にSCフライブルクのU19コーチに就任。2011年12月にはマーカス・ソルグの後任としてトップチームの監督に起用され、以降13シーズンにわたって同職を務めた。

SCフライブルクは決して規模の大きなクラブではない。街自体がシュヴァルツヴァルトの西側に位置し、南ドイツの中心地から離れている。1993年にフォルカー・フィンケ監督のもと1部に昇格するまでは、2部に所属したクラブのなかでもとくに小規模な経営体制だったという。

そんな歴史をもつクラブが2022年にはRBライプツィヒとのDFBポカール決勝、2023年はユヴェントスとのヨーロッパリーグ・ベスト16に挑む存在となったのだ。シュトライヒ氏の手腕がいかに優れているかがわかる。

本テキストでは、シュトライヒ監督が率いたSCフライブルクを長く支えたベテラン選手を紹介する。ノア・アトゥボルマーリン・レールキリアン・シルディリアノア・ヴァイスハウプトなど若手選手の突き上げも激しいなかで、活躍をみせるベテラン選手6人に注目する。


1. ニコラス・へフラー #27

生年月日:1990年3月9日
身長: 181cm 利き足: 右足
加入年: 2010年(内部昇格)
2023/24シーズンまでのSCフライブルクでのスタッツ:
342試合出場 14得点 25アシスト(出典: transfermarkt)

へフラーのプレースタイルはヨシュア・キミッヒの振る舞いと非常に似ている。ディフェンダーの前に位置してショートパスを繋ぐのが彼の役割。ときにはディフェンスラインまで下がってボールを捌き、体を当てられてもターンを駆使してボールを失わないキープ力がある。

守備時には相手の縦パスの選択肢を減らす重要な役割を担う。時折見せる自陣ゴール前でのボール処理のミスはいささか不安だが、攻守において躍動するクラブの支柱的存在だ。

ヘフラーは2005年にSCフライブルクのユースに加入。2010年にトップチーム昇格を果たし、2011年から2013年までの2シーズン、FCエルツゲビルゲ・アウエにレンタルされる。レンタルから戻ってきて以降、11シーズンに渡ってSCフライブルクでプレーした。ヘフラーはクラブ屈指の功労者でありながら、いまだ替えが利かない重要な選手だ。

2. クリスティアン・ギュンター #30

生年月日:1993年2月28日
身長: 185cm 利き足: 左足
加入年: 2012年(内部昇格)
2023/24シーズンまでのSCフライブルクでのスタッツ:
398試合出場 12得点 53アシスト(出典: transfermarkt)

現在のSCフライブルクのキャプテンであり、同クラブの顔的存在でもあるギュンター。SCフライブルクの選手をあまり知らない人でも、ドイツ代表に選出された彼のことを知っている人も多いだろう。ギュンターは正確な左足のキックと豊富な運動量を武器にする左サイドバックの選手。がっしりとした体格ながら機動力があり、タイミングを見計らってペナルティエリア手前まで出ることができる。

ヘフラーと同じく、ギュンターもSCフライブルクユース出身。2006年に加入し、2012年12月8日のグロイター・フュルト戦でトップチームデビューを果たした。それ以来、12シーズンに渡ってSCフライブルクで活躍している。2023/24シーズンはノア・ヴァイスハウプトと出場機会を分け合ったが、彼がSCフライブルクのレジェンドであることに変わりない。

3. ヴィンチェンツォ・グリフォ #32

生年月日:1993年4月7日
身長: 180cm 利き足: 右足
加入年: 2015年(前所属:ホッフェンハイム)
復帰年: 2019年(前所属:ホッフェンハイム)
2023/24シーズンまでのSCフライブルクでのスタッツ:
270試合出場 84得点 76アシスト(出典: transfermarkt)

グリフォは黄金の右足をもつ、フライブルクのゲームチェンジャー。前線の左サイドでプレーするが、相手ゴールに近づくにつれて中央に移動し、トップ下のようにふるまうのが特徴。ドイツ・プフォルツハイム出身ながら、イタリア代表選手であり、情熱的な一面も魅力である。

グリフォの代名詞といえるのがセットプレーでのキック。相手ディフェンスラインとキーパーの間に、スピードとコースをコントロールしたボールを送ることができ、直接フリーキックであれば得点も奪うこともできるため、対戦相手は対応が非常に難しい。

キックの正確性から、SCフライブルクではPKキッカーも任されている。フェイントを駆使した抜くドリブル、精度の高いスルーパス、逆サイドへのロングパスなど、ボールを持った際の多彩な選択肢がグリフォの強みだ。

昇格を果たした2016/17シーズンには30試合で6ゴール11アシスト、復帰後2シーズン目の2020/21シーズンには31試合で9ゴール10アシストを記録するなど、SCフライブルクの攻撃の中心となっている。

4. ルーカス・ヘーラー #9

生年月日:1994年7月10日
身長: 184cm 利き足: 右
加入年: 2018年(前所属:SVザントハウゼン)
2023/24シーズンまでのSCフライブルクでのスタッツ:
230試合出場 37得点 26アシスト(出典: transfermarkt)

SCフライブルクの戦術スタイルを「現代サッカー的」と表現する文章を何度か読んだことがある。プレッシングや押し込んだ相手を崩す姿勢、パスを繋いでいくスタイルは非常に魅力的だ。

そんなSCフライブルクのなかで最初のプレッシャーを担う選手といえるのがへーラーだ。ピッチ上でのへーラーを表現するなら、「よく走るフォワード」。後方からのロングボールを追いかけたり、潰れ役となってキープすることもできるなど、前線に「量」をもたらせる選手だ。

グレゴリチュやシャライなどとコンビを組んで、「汗かき役」に徹することができる。相手ボールホルダーにプレッシャーをかけることをいとわず、ときにひらめきのあるプレーも見せる。前線に複数のテクニシャンを擁するSCフライブルクにとって、へーラーは貴重な「バイプレイヤー」だ。

5. ルーカス・キュブラー #17

生年月日:1992年8月30日
身長: 182cm 利き足: 右
加入年: 2015年(前所属:SVザントハウゼン)
2023/24シーズンまでのSCフライブルクでのスタッツ:
175試合出場 7得点 5アシスト(出典: transfermarkt)

へーラーと同じくザントハウゼンからSCフライブルクに加入したキュブラーは、スター性溢れる選手ではないが、長くフライブルクを支える功労者である。

キュブラーの魅力は3バックの右のポジションや両サイドバック、右ウイングバックとしてプレーすることのできる適応力と献身性。運動力を武器にヨナタン・シュミッドとポジションを分け合い、かつやくしている。

6. マティアス・ギンター #28

生年月日:1994年1月19日
身長: 191cm 利き足: 右足
加入年: 2012年(内部昇格)
復帰年: 2022年(前所属:ボルシア・メンヘングラードバッハ)
2023/24シーズンまでのSCフライブルクでのスタッツ:
162試合出場 10得点 7アシスト(出典: transfermarkt)

SCフライブルクのユース出身者として、オリバー・バウマンダニエル・カリジューリに次ぐブンデスリーガ出場記録を誇るのが、マティアス・ギンターだ。出場機会こそなかったものの、当時20歳でワールドカップ優勝メンバーとなったことでも知られる。

ギンター最大の特徴は足元の正確さ。中盤の選手が出すような長短の正確なパスを前線に供給する。相手のプレスを引き受けながら味方にパスを出せるため、前線の選手が難しい状態に陥る可能性を下げることができる。

また自陣ゴール前でも頼れる存在だ。シュートブロックの技術はもちろん、グラードバッハで見せたように、ディフェンスの中心的存在となってチームを統率することができる。セットプレー時の空中戦の強さも大きな武器だ。ギンターは、2012年1月に行われたアウクスブルクとのブンデスリーガデビュー戦でもヘディングで得点を挙げている。

コンディションが安定しないことが玉に瑕だが、それを考慮に入れても、ギンターがドイツ・ブンデスリーガ代表するディフェンダーであることに疑いの余地はない。

後書き

これだけひとつのクラブを長い期間支えてきた選手たちがいるクラブも珍しいだろう。正直ブンデスリーガではほかに思いつかないし、イングランドやイタリアでもあまりないのではないだろうか。

ラルフ・ラングニックが提唱したように、若手選手はベテラン選手に対して、よりフレキシブルで、より成長性があって、よりパワーがあることは事実だろう。しかしシュトライヒ氏という素晴らしい指導者のもとで、長くSCフライブルクを支えた功労者たちもまた「憧れ」を抱かせてくれるクラブにとって重要な存在である。

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