見出し画像

孤独

 孤独であるということは、自分の心の奥底にあるろうそくの炎を見つめることである。この世界の中で自分という存在がたった一人だということを見つめることである。自分と対峙することで思考と感性を見つめ直し、独自の言葉を生み出す。それは、自分の内奥に存在する炎を燃やすことでもある。
 私達は孤独を見つめることに慣れていない。自分の言葉を生み出すことに慣れていない。情報に埋もれ、知識に埋もれ、自己を見失うことに慣れている。けれども、果たしてそれは本当に幸せなのだろうか?孤独や寂寥の中で思考することが本当の幸せではないだろうか?
 人間は考える葦である。それではアイヒマンは人間ではなかったのだろうか?少なくとも私が考える人間の本質は持っていなかった。それだけは事実である。そして、ユダヤ人達を人間として扱わなかったことも事実である。
 孤独の中で思考することが、私にとっての人間の定義だから。孤独の中で自己と対峙することが私にとっての人間の条件だから。孤独とは私の最も信頼出来る友人であり、私以上に私の存在を理解する一個の存在でもある。
 私は本を読みながら、音楽を聴きながら、自分とは誰かと問いかける。自分の本質は何かと考え続ける。私が私であり続けるためには何が必要だろうかと。私が自分らしくあるためには何が必要だろうかと。それはろうそくの灯で自分の心を照らし続けることである。真理という名の死を受け入れる準備をすることである。
 私は死ぬ直前まで、自己と対峙し続けるだろう。私は死ぬ直前まで、孤独であることをやめないだろう。それはこの世界に対する愛を持ち続けることでもある。

          fin

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?