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ミナモの新しいベース、W9って?

こんばんは。Minamo Guitarsの宮崎です。
Minamo Guitarsは先日、W9という新しいベースをリリースしました。「Type J」と「Type P」の2種類の展開になっています。
1月31日までお得な価格で予約購入を受け付けています。

W9 Type J / Bleu Dragee
W9 Type P / Black

今回はW9の構想から開発、そしてデモ機の製作〜プロモーションに至るまでの流れをじっくり語っていきたいと思います。


モデル名「W9」について

アルファベット+数字の構成

Minamo Guitarsには「S2」というモデルがあります。元々はSynergyというモデル名でしたが、バージョンアップに伴い進化系という意味で「Synergy 2→S2」となりました。

以前から新しいモデルを作る際は、モデル名はS2に倣い「アルファベット+数字」という構成にしようと決めていました。カメラなど機械系の商品ではよくあるネーミングパターンだったりしますね。

ひらめきの小宇宙

そんな中、昨年29歳になった私は「20代の最後に新しい商品を出したいな」と考えるようになります。そこで(29歳か…→29…→「W9…!」)というなんとも安直な思いつきでモデル名が決まったのです。
Minamo Guitarsで新しいモデルを出す条件として、「”今自分が欲しい物、サウンド”を優先する」というポリシーがあります。前々から「シンプルな4弦のJタイプが欲しいなぁ」と考えていたのでラフの図面は引いていましたが、すでにW9というモデル名が決まっていたため、W(=2→2種類)に導かれ「…これはもうJタイプとPタイプが欲しい」となってしまいました。

設計

いざ開発・デザイン

自分なりのひらめきが一通り出揃ってしまったため、大変だと理解していながらも2種類同時のリリースに向けて開発・デザインを進めることになりました。

基本的なスペックとして
・34インチスケール
・板目の1Pメイプルネック、ローズウッドとメイプル指板
・ボディ材はアルダー
・Type JとType Pは共通のボディシェイプ(ピックガードだけ異なるデザイン)
・トラッドなメージを持たせつつオリジナルパーツも盛り込む
・ヘッドシェイプはS2から引き継ぎ
・ヘッド落ち防止のためHipshotのUltraliteペグを採用(コスト増だが、プレイアビリティ優先)

など、できる限りシンプルな構成でもプレイアビリティを大事にするというテーマを意識しつつW9らしさを模索しました。

普段AdobeのIllustratorで図面を引いているので、温めていたラフのデータから清書していき、ヘッドシェイプはS2のデザインを基に4弦(3:1のペグレイアウト)用に調整。

左:W9 右: S2


ボディシェイプは、トラッドさにスタイリッシュさを掛け合わせるイメージでデザインしていきました。ボディシェイプは共通としたため、ピックガードはJとPのそれぞれが持つ音のイメージが感じられるような形状に。

Type Jはシャープに、Type Pはふくよかに。
素材はアクリルの艶消しをチョイス
コントロールプレートは共通のオリジナルデザイン。ノブの数に合わせ穴の数と位置を調整しています。
素材は現状SUS404のヘアライン仕上げですが、今後変更を行うかもしれません
指板のインレイは前々から実装したかったゴーストインレイを採用。
インレイ部分はレジンなので、カスタムオーダーではさまざまな色味に調整可能です。
ラメを流し込んで派手にするアレンジなども◎

試作へ

一通りデザインや仕様が決まったら、試作へと移ります。試作段階から、実際の加工を想定しMinamo Guitarsではレーザー加工機を用いて、製作に必要な治具やテンプレートと呼ばれる型を作ります。
加工精度を維持するサポートをしてもらったり、個体ごとのばらつきを極力抑える役割があります。繰り返しの加工にも適しているので、ミスが減り作業タイムが短縮できるメリットも。

ヘッドやボディ、ピックアップの座ぐりを掘るためのテンプレートなど

寸法やデザインの違和感、各パーツとの整合性などの修正や確認できたらいよいよデモ機の製作に入っていきます。

デモ機製作〜プロモーション

デモ機製作

W9はシンプルな構成のベースなので製作自体は滞りなく進めることができました。しかし同時に店舗様や個人の方からのオーダーもあるため、スケジュール管理が難しく全体的に遅れが出る形となり、今後の反省点です。

デモ動画撮影

デモ動画を撮影するにあたり、強力な助っ人に駆けつけていただきました。ベーシスの辻友輔さんと、某カメラメーカーに所属している学生時代からの友人です。
辻さんとはSNSで10年前位から相互フォローの関係で、一度お会いしてみたかったんです。

撮影風景。最高の演奏&圧倒的機材量で個人的に至福の時間🥰

お二人には前乗りで浜松へ来ていただいたのですが、その夜の懇親会で僕とカメラマンがお酒を飲みすぎて、翌日の撮影開始が遅れたのはいうまでもありません(ニッコリ)
若干時間は押してしまいましたが、撮影はスムーズに進んだので結果オーライ。とてもいい素材が撮れました!

動画編集

まずはLogic Proで録った録音データを仕上げていきます。
辻さんに制作していただいたオケと録り音のバランスを調整したり、音圧等を調整します。いわゆるミキシングという作業ですが、大した知識があるわけでもないため今回は違和感を覚えない状態をゴールとして編集しました。

Logic Proの編集画面
\ ベースが2本同時に鳴っているため色々難しい /

音源の編集が完了したら映像の編集に入ります。今回はカメラマンの勧めもあり、DaVinci Resolveという動画編集ソフトを使いました。無料版と有料版があり、無料版でもほぼ全ての基本的な編集が可能で、特に色編集が細かく行える点が特徴とされています。
初めて使うソフトに加え、今回はマルチカム編集(同時に撮影した画角の異なる素材が複数ある)が必須なため非常に苦戦しました…笑
しかし、映像と音の素材が最高ですから手を抜くわけにはいきません。
数日かけ納得できるいくつかの動画を作成しました。

DaVinci Resolveの編集画面
SSDのデータが一部消えてしまい所々メディアのリンクが切れている(とても悲しい)

写真撮影

動画が完成したら、SNSやウェブサイトで使用するためのデモ機の写真を撮っていきます。そのまま商品写真として利用できるように抜かりなく撮影していきます。
楽器全体が映る画角から、ヘッドやボディ、特に見てもらいたい箇所などをピックアップしそれぞれ撮影しました。
AdobeのLightroomで色味や質感の編集をし、Photoshopで背景の切り抜きをし、影をつけるなど加工しました。
最終的な写真のサイズや角度の調整は、使い慣れているIllustratorでやってみました。特に楽器の全体写真は、撮影時はなるべく垂直になるよう撮っていますが若干のズレが生じているので、Illustratorで引いてある図面を透過させ、読み込んだ写真と重ねることで、ズレを把握し調整が容易になります。結構いい方法だと思ったので、今後はこの工程で編集を行なっていく予定です。
上記のような編集ソフトもそうですが、デジタル一眼の使い方も段々慣れてきて、マニュアルモードで狙った画が少しずつ撮れるようになり成長を感じられました。

元素材の一例
背景を抜いて影をつけます

Webサイトページ作成

諸々の素材が出来上がったら、最後にW9のプロダクトページや商品ページを作成します。すでにMinamo GuitarsのWebサイトは立ち上げているので、そこへW9のページを追加していきます。コードの知識は一切無いし、勉強することもほぼ諦めているのでノーコードで構築できるWixの有料プランを使用しています。デザインや機能諸々、今の自分にはこれが限界ですが特にPCのページはいい感じに仕上がったと思います。今後も少しずつ変更を加えていき、魅力的なサイトへと成長させていきます。

PC上でのプレビュー
用意してきた素材が役に立ちます

いよいよ公開!

全ての準備が整ったらいよいよ公開です。制作した素材を使い宣伝していきます。国内だけではなく、海外の方からもお問い合わせをいただけました!YouTubeすごいです。

Xは写真が特に反応してもらえました
時間をかけて準備した甲斐があります。
今回制作した動画たち
一部広告機能を利用しましたが、Youtubeのおすすめに載った動画が特に再生されました
Webサイトのトラフィック概要
SNSのリンクからのアクセスのほか、ブラウザからの検索も増えています

まとめ

今回のW9のリリースには、企画から発表まで半年ほどかかりました。一から自分で選択と行動をすることは、一言で言えば『しんどい』に尽きます。技術や予算、時間にも制約がある中で、どう進めていくか。もちろんその中で失敗もたくさんあり、何回も心が折れました。その度に少し休んで、折れたところを治してまた立ち上がる。しんどくても今生きていて一番やりたいことなので勇気を持って進んでこれました。進めば進むほど自分に嫌気が差し、自己肯定感なんてものは一つも芽生えませんが、その代わり対価として得られるものは唯一「手応え」でしょうか。僕の大好きなイチローがこの前似たようなことを言っていたので真似しました。

プロモーションにこれだけの手順を踏んでも、もちろんすぐに結果として出るわけではありませんが、多くの媒体にしっかり情報を残すことによって、後々の成果や認知につながっていくと思います。終わりはないですね。
いつも応援のメッセージをくれる友人やお客様、言葉は交わさなくてもSNSで拡散してくれる仲間、販売にご協力いただいている企業の皆様
僕が前を向いて進んでいける理由は、支えてくれる人の多さにあると思っています。自分の力だけでは決して得られない宝物です。

何より今回、デモ撮影にご協力いただいた辻さんと友人にはとても感謝しています。ベーシストとしての活動を夢見てSNSを頑張っていた時代や、当時名古屋にあったギタークラフトの専門学校に通う傍ら、浜松にある大学の音楽サークルに参加していた経験がなければお二人に出会うこともなかったので、こういう機会は本当に嬉しくなるし、誇らしい気持ちでいっぱいです。おかげさまで素晴らしい作品ができました。
ナイスな楽器を作りたくて活動していますが、こういう機会を設けて感謝を感じられることもまた、続けていて良かったなと思える瞬間です。

また書きます!

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