見出し画像

誰とも話すことができない苦しみ

はじめに

僕は幼稚園児~中学2年生まで誰1人として話をすることができなかった。その後、これが場面緘黙症だと分かったのは19歳の時だった。話せなかった10年くらいの記憶はほとんどないようなものなんだけど、思い出せる限り書いてみる。

幼稚園の時

幼稚園の時が一番記憶がない。この時の知り合いに、話しているところ見たことがないって言われたから、この時点で発症してたんだな~って推測している。記憶がないから特筆すべきこともない。

小学生の時

話すことができなかった時期でかなり辛い部類に入ると思う。幸いなことにみんな優しくていじめられることもなく、なぜか友達もいた。でも、鮮明に覚えている記憶のほとんどは場面緘黙症に関連しているんじゃないかなと思う。(もちろんいい記憶ではない...)話すことができない、声を発することができないだけで相当辛い。発表も音読も辛くて毎日の授業がしんどかった。

1年生の時、点呼があった。名前を呼ばれたら「はい、元気です!」って返事をしないといけない。でも、僕は「はい」すら言えなかった。代替案として、自分の席から教卓にいる先生のところまで行って耳元で「はい」と言っていた。正直、この方法も地獄でみんなの注目を浴びるからしんどさ、恥ずかしさは言葉にはできないほどだった。もしこの記事が教育関係者の目に留まることがあれば、話せない子には配慮してあげてほしい。

5年生の時、昼休みに友達とサッカーをしていた。強く蹴ったボールが1人の頭に当たってしまった。申し訳なくて、すぐにごめんとジェスチャーしたけど、その人には見えていなかったらしい。その後、わざとボールを当てられ、喧嘩のようになってお互いの担任の先生が出てくる羽目になった。仲裁がある場でも「ごめん」と言うことはできなかった。もちろん自分自身は言いたいし、言わないといけないと分かってはいたけど、声は絶対に出なかった。

中学生の時

場面緘黙症を自力で治すことができた人生のターニングポイントとなる時代。小学校と同様に授業で発表や音読があった時は地獄だった。

転機となったのは中学2年生の時。来年受験を控えていて、受験内容に面接があると言われた。それを知った時には、絶対に高校には合格できないと思った。話せるようにならない限り。ある日の昼休み、友達と過ごしている時間に何がスイッチになったのか全く分からないけど、言葉を発することができた。急に喋った僕に友達は一様に驚いた顔をしていたが、自然に受け入れてくれた。

今考えてみると、話せるようになったトリガーは受験だけではないと思うけれど、この時は切羽詰まっていて、自分を変えないといけない気持ちでいっぱいだった。その後、話せないという状況はなくなった一方で、後遺症には悩まされている。

追記)1つ嫌なエピソードを思い出したから追記する。声が発せられるようになってから初めての合唱コンクールがあった。担任の先生は熱心な人で、練習で歌う時に声が出ていない人をクラス全員の前で1人ずつ歌わせた。正直、もう死にたいと思ったし、先生は好きな方だったけど、一気に嫌いになった。(笑)こういう悲劇がなくなるようにどうにかならないものかと本当に思う。

高校から場面緘黙症を知るまで

話せるようになって友達や先生とも会話はできるようになり、そこそこ充実した生活を送れるようになった。その一方で、大勢の前に立って発表したり、そもそものコミュニケーション能力が未熟だったりと苦労することは多々ある。話せない期間に他人同士のやりとりを見ていたし、そこから見様見真似で話してはいるが、どこかぎこちなかった。経験の差を頭で考えて埋めようにも、このスキルに関しては限界があるんじゃないかな~って思ったりしてる。

場面緘黙症という存在を知った時には、過去の自分の状況に疾患名があることに安堵したし、自分だけじゃなかったっていう孤独感から解放されたのを鮮明に覚えている。でも、それから時間が経った今は、場面緘黙症のせいで自分は何もできない、この疾患さえなければって思考に陥ってしんどくなっている。

最後に

場面緘黙症の発症率は0.05~0.08%と言われており、なおかつ認知度がかなり低い疾患です。話せないだけで周囲の大人は、この子は大人しいだけで、いい子だから大丈夫だ、将来的に話すようになると考えがちで、自分の意見を伝えられない子たちは適切なケアを受けることができずに大人になっていきます。結果的に話すことができないまま大人になる例も多いそうです。実際には包括的なケアが必要となります。診断してくれた精神科医によると、僕のように自力で話せるようになることはレアなケースです。様子を見るだけでは経過が良好になる可能性は低いと考えています。

今回のnoteでは、場面緘黙症とはどういう疾患かということを当事者の経験として書きました。医学的専門知識はなく、すべて自分で調べ、考えた結果ではありますが、今後、場面緘黙症に関してより深く書きたいと思っています。一人でも辛い状況から早く抜け出す手助けができれば幸いです。

ここまでお読みいただきありがとうございました。よろしければ、いいね、フォローをよろしくお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?