おひつじ座27度 サビアン

想像力で取り戻された、なくした機会

旅人に向かって、男性はまた静かに話を続けます。

「オレの家さ、あんまり仲が良い家族じゃなくて、どこか居心地が悪くて、まあだんだん寄り付かなくなったんだけど……。いろいろ他も上手くいかなかったりで、エネルギーを持て余したこともあったよ。

 どこかで認められたいってずっと思ってた。

 それをバネにして、だから努力して、ここまで来る過程の中、いや、今やっとなのかもしれないけど、いろいろ恵まれてるとこもあるんだって気づくことができたのかな。

 まあ、今はありがたいことにこんなにプレゼントをもらったりってことになったりしてるけど、でも本当はさ、根っこのところに、たくさんの人じゃなくて、ただあの人に認めてほしかったってのがあるんだと思うんだよな。」

男性はふっと、悲し気なでもやさしい顔になりました。

旅人の頭には、男性の子どもの時の姿と、家族もしくは今の男性自身が、子どもの姿の男性の頭を「いい子、いい子」と撫でているようなイメージが浮かびました。


「ごめんな、もう少しだけ、くっちゃべりたい気分なんだ。」


旅人は、男性がどこかで絡まって見失っていた本当に欲しかったものを思い返す作業をしているように思いました。