おうし座1度 サビアン
透き通った湧き水の流れ
――わっ……わさび!
旅人は公園の中を歩いていました。
カモの泳いでいた池の奥にちょっとした山があり、
「湧水↑」の看板があったため旅人は興味を引かれ、少し登ってみることにしたのでした。
脇を流れる沢では小さな魚が跳ねました。
沢の近くに畑のように植物が植わっていて看板を見ると「わさび」とあったので、旅人は驚いたのでした。
山の中でわさびが育てられていることもそうですが、湧水を利用してたくさんの自然が生かし合っていることに旅人は驚いたのでした。山の木々、魚、わさび、コケ、カモの池、人……。
旅人は湧水に辿り着きました。
まだ後ろに続く山を背に、勢いよく流れる透き通った湧き水が下に流れて小川になっているようでした。
川に差し入れた手に、触れる水は冷たく心地よく、旅人は小川に注ぎこまれたばかりの水を水筒に汲み、飲んでみました。
――おいしい……!
旅人は水筒をかばんにしまうと、湧水に、その後ろの山に、感謝して手を合わせて目を閉じました。
――水をいただきました。ありがとうございます。
涼やかな流れの音以外の静寂と瞼の裏で感じる差し込む光に、旅人は自分も自然の一部として迎えられ、包み込まれているような、穏やかな安心感を感じました。
目を開けた旅人はもう一度山々と水の流れを眺め、自分の心を信じて旅に出て来てやっぱり良かったなと思いました。そして心の中にも澄み切っていて希望があふれ出てくる場所があるのを感じていました。