おひつじ座13度 サビアン

不発弾

「あれ?」
旅人と子どもを見つめる人がいました。

「お父さん!」
子どもが満面の笑みで迎えます。
「お客さんだよ。お父さんから前に聞いた雁の話をしたら、ぼく、物知りって褒められちゃった。ところで爆弾はどうだったの?爆発した?」

「爆弾……?」
旅人は思わず聞き返します。

「爆弾が見つかったんだよね?古いやつ。それでぼく、店番任されて……」
子どもが答えます。

「あれは、不発弾だった。大丈夫だ。」
父親は子どもの肩に軽くぽんと手を乗せました。

「爆発しない?」
「ああ。」
「ああ、よかった。でも、失敗作だったってこと?」
「おそらく。専門家は試作品だろうと。開発段階のものだったんだろうな。しばらく確認して回収すると言っていたから、そろそろこの前を通るかもしれん。怖かったら見なくてもいい。」

父親は大きな手で、子どもをぐいと自分の肩の上に引き上げました。

もう一本先の通りを迷彩の衣装にガスマスクをした一団が、黒く長細い固まりを運んでいきます。

子どもは父親にしがみつきながら、旅人は少し怖いと思いながら、それが通りすぎるのを見ていました。

旅人は不発弾と聞かされても、爆発する爆弾だとしたらどうしようとドキドキしていました。あれは開発途中の試作品(プロトタイプ)の一つだとしても、開発に成功した爆弾も近くにあるような気がして少し怖かったのでした。