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氷の舟

一枚の氷の舟に 乗って私は

暗い海を 一人漕ぎ出す


とぷとぷ 氷は海に浸み出す

とぷとぷ 海は氷を溶かす

とぷとぷ 心は透明だから 夜の空気が流れて届く


ああ さむいな なんて

ああ さみしいかも だなんて

ああ 隠し通せないくらいに

心細いのが ほんとうの私


目に沁みるから 冷たい風が

入り込んで どうしようもなく つんと鼻に来るから 

胸に流れ込んで 震える


何がそう思わせるのか

何がとか もうよくわからないけど

わけなんてさえ ないのかもしれないけれど

心細いのが ほんとうの私


とぷとぷ

照らし出す あたたかな光に

いっとき忘れてられたとしても

また すっと 涙がこぼれてきたりして

脆くて弱い


氷は少しずつ削り取られてく


なくなってしまう前に

なくなってしまう前に

そう簡単になくなる氷は選んでないけど

たどり着けるように

近づけていけるように


私は 舟を 漕ぎ出していく