おひつじ座12度 サビアン
雁の一群
空の色が変わり始めようとしていました。
遠くから鳥が、頭上をVの字で隊列を作って翔け抜けて行きます。
旅人は目を奪われていました。
「雁だね」
店番の子どもが言いました。
「頭が良いよね。みんなで疲れないように隊列を組んで。順番交代で前に出たり、後ろに下がったり、群れのなかで飛ぶ位置を変えてるんだって」
「君は物知りだね」
旅人は感心して、子どもに視線を下ろしました。
子どもは、誇らしげに胸を張ってから、にやりと笑いました。
「って、お父さんが言ってた」
旅人は子どもの頭をくしゃくしゃに撫でながら、
長い旅を続けるには、作戦とか策略とかが必要なんだよなと、心の中でひとりごちていました。