おうし座3度 サビアン
シロツメクサに近寄る
※2020.6.25一部改訂
雨が上がったので旅人は四阿(あずまや)から外に出ます。
芝地にキラッと光るものが見えて歩み寄ります。
シロツメクサ、クローバーの花でした。
小さな花なのに激しい雨に打たれても強く、葉に、花についた雨粒が陽の光に反射して、その自然の生命の強さが際立っているかのようでした。
「子どものころ、花冠にして遊んだっけ。」
旅人は花を見て思い出していました。芝生を駆け、花を摘み、四葉のクローバーを探した幼い日々を。
――難しいことなんて考えないでただ自然の中で遊んでいた。芝生の感覚を足に踏みしめて、時には転がりながら全身で感じて、この手で花に、クローバーに触れて。ただ楽しかった。
旅人は自然と触れ合った、幸せな元気をくれる記憶を頭に描きながら、シロツメクサについた雫を弾こうと手をのばしました。
その時、いつのまにか旅人の手についていたテントウムシがするするっと上っていき、人差し指の指先から飛び立って行きました。