脱水症のメカニズム

浸透圧のしくみ

 脱水症状を知る上で大事になってくるのが、浸透圧の仕組みです。さらにこの浸透圧を理解するための前知識として、「溶質」、「溶媒」、「溶液」を理解する必要があります。
 わかりやすくするために、溶質を食塩、溶媒を水、溶液を食塩水として考えましょう。まず、溶かしている物質が食塩、その食塩溶かす物が水、食塩を溶かした水が食塩水と考えます。

 このように水に食塩を溶かすと、溶液の濃度を均一にしようとする力が働き、このことを「拡散」と言います。これらのことを踏まえた上で次の話にいきましょう。

 あるものを水に溶かした溶液が2種類あるとします。
それらの溶液を半透膜で区切られた容器に移します。(半透膜とは、水などの細かい分子は通すが、タンパク質などの大きな分子は通さない膜)そうすると、先程の拡散の働きにより2種類の溶液の濃度を均一にしようとし、濃度の低い方から高い方へ水が引き付けられます。
このことを浸透圧と言います。

 
脱水症状のしくみ

 人の身体は60%が水❗って言うのは有名な話ですよね。では、その振り分けは?ってなると、うーん…。ですよね。
 まず身体には、「細胞内液」と「細胞外液」の2つがあります。細胞の中の水が内液、細胞の外の水が外液です。そのままですが…。内液の割合が40%、外液の割合が20%になっています。さらに外液の方は、間質液(15%)、血漿(5%)に分けられます。


 内液と外液には、さまざまな物質が溶けています。内液にはカリウムイオン、外液にはナトリウムイオン。そして細胞や血管は半透膜で出来ています。と言うことは先程の浸透圧の話、溶液は均一になろうとする働きが生じます。ここで大事になってくるのが、ナトリウムイオンの方です。


 人の身体には、水と塩は必要不可欠です。脱水はこのどちらかが、何かしらの原因で不足し、細胞外液が減少することにより起こります。原因には3つ存在します。
1、高張性脱水(水が不足し起こる脱水)
2、低張性脱水(塩が不足し起こる脱水)
3、等張性脱水(水と塩どちらも不足し起こる脱水)



 高張性脱水

 まず水が不足し起こる高張性脱水です。原因としては、水分の摂取不足、汗を大量にかく、尿崩症などがあります。それらの原因により身体の水分を失うと、細胞外液の水が不足します。水が不足すると言うことは、外液の濃度が濃くなるということです。なので、濃くなった外液に均等にしようとする働きが生じ、内液から外液の方に水が引き付けられます。これが水の不足による脱水です。
 高張性脱水の症状としましては、口の渇き、筋肉のひきつり、痙攣、昏睡などがあります。


低張性脱水

 次に塩が不足し起こる低張性脱水です。こちらの原因としては、大量に汗をかき、水のみを摂取している場合に起こりやすいです。汗をかくことにより、細胞外液のナトリウムイオン濃度が薄くなります。そうすると、先程の高張性脱水と逆に、内液に水が引き付けられます。そのため、外液の水分量が不足し脱水となります。
症状としては、頭痛、嘔吐、筋肉のひきつり、痙攣、昏睡などです。

等張性脱水

 最後は水と塩が等しく不足し起こる等張性脱水です。原因としては、出血、下痢、嘔吐などです。こちらは、細胞外液の水とナトリウムが等しく失われるため、浸透圧の働きは起こりません。しかし、細胞外液の水分量は不足しているために脱水となります。

以上が脱水症状のメカニズムです。

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