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自意識の奴隷 読み返していない日記#27

集団に席を譲った。

私はカフェで、二人掛けの席に挟まれ座っていた。具体的には画像のような感じ。

四角が机で丸が椅子

あえて中心に座ったわけではなく、最初は私の左右にそれぞれ人が座っていた。その二人が退席したのでこのような構図になった。

リンゴジュースを飲んでいると集団が来店した。そこまで大人数ではないが私は普段人と交流をしないので4人を超えたら区別がつかない。

ざっと見た感じぽつぽつ空席はあるが大人数が座れる席は空いていなかった。しかし私は、私が移動すれば席を寄せて6人席に出来ることに気がついた。上の画像から私を消去するような形である。

ここでスマートに「こちらどうぞ」と言えれば良いのだが、少し前の文章を思い出してほしい。私は普段人と交流をしない。見ず知らずの集団に話しかけることなんて到底できないし笑顔で譲るなんてもってのほかである。

だが今の私は6人席に一人で座っているようなものである。さすがにバツが悪いというかなんというか。

そこで私はしれっと遠くの席に移動することにした。飲み始めたばかりのリンゴジュースを持ち席を立つと、集団の中にいた大きな声の青年から「ありがとうございます!」と言われた。それに続き他の集団メンバーからもお礼を言われた。恥ずかしい。しれっとがバレバレであるほど恥ずかしいことはない。

席を離れれば解決だと思い席を探すが、近くにしか空席がないことにここで気づく。私は諦めて先ほどの私の席、今は集団が座る席からほど近い机を陣取った。

気まずい。

相手は多分もう私に席を譲られたことなど忘れているだろうが私はそうではない。しれっとがバレバレであった相手がずっと視界に映っているのである。恥ずかしい、恥ずかしい。

相手にどう思われているかなんて関係なく、自意識の強さからこの状況が耐えられない。私はしれっとがバレバレの人間なのだ。そうなのだ。良い奴になりたくて席を譲ったと思われていたらどうしよう。いいや、思われているかはどうでもいい。思われる可能性がある場所に自分が位置していることが許せない。

結局私はほとんど飲んでいないリンゴジュースを返却口に戻し、帰路についた。

物心ついた時から、物心忘れるときまで、私はきっと自意識の奴隷。

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