漫画『SANDA』は、サンタクロース✕超少子化社会が生み出した世界観!~大人っていいもんだよ。と伝えたい~
板垣巴留さんの漫画『SANDA』の世界観が衝撃だった。
前作は動物たちが擬人化された世界で、
主人公はどこか気が抜けたハイイロオオカミの『BEASTARS』。
少し危なげだけど、巻数を重ねるごとに主人公のレゴシの成長と勢いが増して夢中になり、最高の読了感だった。
さて、次作の『SANDA』はというと、
「よくもまあぁ、こんなストーリーが思いつくなぁ!」
「脱帽だぜ!」
「で、どこに向かうの!?」
と、終始目が離せない内容。
ひとまず3巻まで…。と読み出した自分がにくい。
なんと現在5巻まで販売中。(2022.10.15)
以下は3巻までのネタバレが多少含みますが、
自分の頭を整理するためにも記すとします。
主人公はサンタクロースの末裔!
『SANDA』の世界観で外せないのが「サンタクロース」。
この世界では、サンタクロースの存在は都市伝説のようなもので、いるのかいないのか誰も知らないし、もはや誰も信じていない。
サンタクロースのように、子どもに夢や希望を与えるような存在は不要な世界なのだ。
しかし、あるきっかけで主人公の三田少年(14)は、
クラスメイトの冬村さんに刺されて(!)、サンタクロースに。
実は彼はサンタクロースの末裔。
赤い衣服を身につけるとサンタクロース(老人)に変身することが前提にストーリーが進んでいく。
彼がサンタクロースの末裔ということは後に、クラスメイトの甘矢くんも知ることになる。
冬村さんと甘矢くんの2人は、都市伝説だといわれていたサンタクロースに各々願いを叶えてほしいため、密かにサンタを信じている子どもなのだ。
サンタを信じる子どもがいるほど、サンタの力もみなぎる設定。
それは火炙りになっても死なない、無敵状態!
なんなら足から刃物のようなものが生えて、
それはまさに鋭利なソリ。
所々で、子どもたちのサンタを信じる想いがサンタの力に直結するシーンは少しほっこりする。
「子どのなんだから信じて当たり前じゃん!なんて可愛いのかしら♡」
と、感じるだろうけど、この漫画の世界観は、
・大人はロクでもないいきもの
・老いは悪であり、若さこそ尊いもの
と、いう内容。
ストーリーは主に学園内で進んでいき、
今のところ出てくる子どもたちの親をまだ見ていない。
(どんな親なのか、少し気になっている。)
超少子化社会が生み出した世界
わたしが驚いたのは、先程のファンタジーな世界観はなく、
超少子化社会が生み出した価値観だった。
成長は悪!
成長するためには睡眠が必要だけど、
この世界の子どもは寝ない。寝たらダメ!と教育される。
睡眠をとらなくてもいいように、予防接種や食事でコントロールしている。
成長ホルモンなんて出てしまった暁には厳しい罰が下る。
(実際、生きているのに学園内でお葬式なるものが開催されるシーンが)
子どもの処罰も優遇
この世界には「少年愛護法」なるものがあり、
未成年の殺人行為は大人が相手だったら無罪になる。
つまり、子どもは大人を殺しても罪に問われない。
さらに、そんな子たちが引き続きなにもなかったかのように学び舎で授業を受けている。
驚くべきことに、彼らは虫一匹も殺せない顔をしているのだ。
サンタクロースを信じる子どもにほっこり♡なんて、つかの間のストーリー展開。
「若さには価値がある!」と、整形しまくる学園長(92)
上記でも述べたように、少し異様な学園内。
先生から生徒へは敬語でしゃべり、生徒は先生にタメ語でしゃべる。
トイレは大人専用と子ども専用。
生徒はロクでもない大人とは、プライベート空間は共にしないし、少し見下した感じだ。
そして学園長ですらも「若さは価値そのもの!」と豪語する有り様。
学園の理念である「トラウマ0教育」は、
大人になるに連れてトラウマを抱えると、足がすくんで前にでることを阻む要因になる。
だから、苦しいこと、悲しいことなどトラウマの現任になるものは排除して、成長しないことが素晴らしいことである!というもの。
だからこそ年を重ねても、年齢に抗い続けて、痛みに耐え続けて、整形をしまくって若さを保つ、異常な学園長だったのだ。
美魔女…は思いっきり通り越しているものの、
少なからず歳にあらがう姿は現代人にも共通していることのように思う。
決められた枠を超えて、大人になれるのか!?
大人になることは当たり前だし、誰も止めることはできない。
『SANDA』の世界観では決められた教育・結婚・生活をこなすことが良しとされているもの。
だけどなんとなく、見えない枠のようなものがあるのはこの世界と少し似ていたりもする。
あり得ない世界観ではあるものの、
この漫画はなにかに警鐘をならしているようにも感じる。
大人が悪である世界は少々つらいものを感じたけど、
「大人っていいもんだよ!」って、声を大にして言いたくなる。
そんな漫画が『SANDA』。
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