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②SMTMに現れた少年に私が惚れ込んだ理由

ウチャニが所属するダデュ(Dynamic Duo)チームのディスバトルの対戦相手は、Tiger JK&Bizzyチーム。

全チーム、先だってのミッションで5人から4人にチームの人数が減った関係で、試合は2:2が1回、1:1が2回の計3試合に。
試合当日までにビートや歌詞の構成、何より事前に決められた対戦相手をどうディスってねじ伏せるか、プロデューサー陣と徹底的に考えることが重要だ。

ウチャニのパートナーは、後に最終2位となるノクサルさん。
ノクサルは面倒見がよく、ウチャニも人懐っこい性格なので、このペアは本当に相性が良かった。
また、ノクサルが長髪だったこともあり、視聴者の間では「18歳差の母子」と言われたほど。

そしてこの二人の対戦相手は、ノクサル同様後に最終3位となりプロデビューする大学生のウ・ウォンジェと、唯一の女性ラッパーとして残っていたA.solのペア。

相手チームはかなり苦しんだ。やはりいくら勝負とはいえ、小学生相手に過剰なディスはできないからだ。
倫理協定のようなものに引っかからない程度で。
ちゃんと放送できる範囲内で。

そしてディスバトルとは、単に悪口を歌詞にすればいいものではない。ウィットに富んだセンスある言葉で、相手に決定的な一打を与えなくてはならない
そう、すんげえ難しい

そして試合当日。A.solのディスで会場はあたたまり、ウォンジェが放った一言でボルテージは一気に上がった。
「昨日までキャッキャ(赤ちゃん言葉)言ってたでしょ」
「泣いたっていいぞ。サンタさんなんていないんだ」


強すぎる。敵ながら天晴とはまさにこの事だと思う。
煽られている時のウチャニの顔がマジで怖かった(笑)。


余談だが、この日のA.solの歌詞は本当に強烈だった。
ノクサルの股間を指差しながら「私によこしな」って言ったり、ウォンジェが「女かと思った。ソラ、一つくれてやれ」と歌ったときにノクサルに自分の胸を差し出すフリをしたり。
いい意味で女じゃねえ…と感心したのを覚えている。

そしてそれに対抗するウチャニとノクサル。
ここで。試合の空気やら相手の言葉にボルテージが上がり理性が飛んだのだろう。
ウチャニが考えてきた歌詞を忘れてしまったのだ。

しかし、ここでまた大人達が度肝を抜かれる事態が起きた。
ウチャニはその場で歌詞を考えながら歌ったのである。
そう。いわゆる【フリースタイル】だ。

小学生でフリースタイルが出来るなんて聞いてないんだが…!?
と、私はまじでビビり倒した。
やっぱり彼は恐ろしい子だった。

しかも、観客もそれに気づいていない
ダデュさん達二人が「フリースタイルだ!」「歌詞を忘れたのか!」と言わなければ、それがピンマイクに拾われていなければ、きっと私も含めてスタッフすら知ることはなかった事実だろう。

ウチャニはウォンジェの肩に手を回し一言「しっかりしろよウォンジェ」と、呼び捨てにして煽ったのである。
ラッパー達の評価としてはウォンジェに軍配が上がっていたが、それ以上にウチャニも善戦したと私は思う。

結果的に、ダデュチームは他の二人(ハネ、ライノ)を含めた総合評価が良く、ディスバトルでは見事勝利を収めた。
負けたチームからは更に一人落とされ、3人になることになっていたので、胸を撫でおろした。

そしていよいよ、長かった予選を終え、本選が始まるのである。

(③に続く)

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