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インターホンの向こう側の話

 仕事から帰宅する。インターホンのランプがついているのに気付いて、履歴を確認する。昼の12時前くらい、配達員ではない女性が一人で映っていた。きっと何かの勧誘や営業なのだろう、うちが留守なのを確かめると、もう一度インターホンを押すことはせず、去っていったようだ。
 ふた月に一回くらいのペースで、このような履歴が残っている。彼(女)らは不在票のようなものを残したりすることはないので、一生誰だか分からない。不審な様子はないから困っているわけではないが、明らかに単身者用の住居へ、平日の真昼間にやってきてインターホンを押すというのは、いったい何が目的なのだろう、と思う。私が平日の昼間に在宅しているとでも思われているのだろうか。
 と書きながら、もしかして不在であることを確かめるのが目的だったりするのか、という視点に気付いてぞわっとする。在宅していて対応すれば営業チャンス、在宅しておらず対応しなければ不在というデータが向こうに蓄積される……。こちらがいようがいまいが、訪問者には何かしらのポイントが溜まっていくというシステムなんだな……。それならいくらでもインターホン押したくなるよな。知らんけど。

 仕事帰りに見上げた空に、大きな満月が見えた。今年一番大きな満月らしい。写真に収めようとスマホをかざしたけれど、なんでだろうね、スマホで月を撮ろうとするとものすごく小さくなって、その魅力が途端になくなってしまう。いや、いまレンズの仕組みとか望遠とかのそういう説明はいらない。そうじゃなくて、そうではなくて、月いまでっかくてすごいから見てよ、って君に言うために月は写真に収まらないんだって、そういう話にしておきたいんだよ。

 コロナ感染の残響。いまだに咳が治らない。そろそろ夢のシックスパックも手に入りそう。咳が止まらないときに、この「腹筋割れそう」ネタを披露するのは私の定番ネタなのだけれど、どこまで共感性があるのかは分からない。
 食べられなくて自然と減った体重はしれっと戻ってきていた。おかえり私のキログラム。永遠の別れにはまだ遠い。
 咳き込みすぎていよいよ腰をやった。ぎっくり腰の一歩手前のような、普段できていた動きに痛みや違和感を感じるような状態。「そろりそろり」という掛け声が聞こえてきそうな歩き方で今をなんとか凌いでいる。腰をやると本当に体が動かない。にくづきに要とはよく書いたもんだな、と思う。

 今日も宅配受け取れなかった。

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