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久しぶりに見た義母の笑顔

義母が施設に入ってから、毎週末、zoomを使用して会話をしたり、直接面会に行ったり、義母の笑顔は見ていた。

2/3、急に食欲がなくなり、食べることだけが生き甲斐のような義母がよ?
熱は微熱程度だけど、念のため施設の方から病院に連れていくので、来てくださいとの連絡があった。

長い検査の結果、誤嚥性肺炎との事。
そのまま入院。

眠っている間に、唾液が気管に入り込んだのではないかと。

誤嚥性肺炎…。

つい最近、職場の同じチームの方のお父様が、誤嚥性肺炎から食事が取れなくなり、胃ろうもされて、お亡くなりになられたばかりだ。

我が家は、延命治療はしなくて良いと医師に伝えてある。
胃ろうもしなくてよいと。

どこからが延命治療なのだろう。

欧米では、食事が取れなくなった時点でゆっくりと亡くなっていく。
呼吸が楽になり、苦しさも減り、穏やかな最期を迎えることができるという。

義母の今の点滴が、救命のためなのか、延命のためなのか、素人の私にはわからない。

義母が入院している病院は、面会は一家族一人だけと決まっている。

だから、実の息子である夫が面会に行く。
私は待合所で待っている。

夫からも、面会を済ませた義母の弟妹からも、良い話は聞いていなかった。

ボケが進行しただの、全く動けないだの。

今日、私はこっそり看護師さんの目を盗んで、夫が面会中の義母の病室に忍び込んだ。
自分の目で確かめるために。

前日に、看護師さんに連絡をして、食べられるもの・食べていいものを確認した。

もともと、病院食が嫌いな義母だ。
ふりかけ持ってきて。
海苔の佃煮を持ってきて。
梅干しが欲しい。
金山寺味噌が食べたい。

食べないことの理由は、もしかしたらそこにあるのかもしれない。

長い間、義母の世話をしてきた者の勘。

その勘は外れるかもしれない。
でも、やらないよりはやった方がいい。

看護師さんからは、ドロドロしたものなら大丈夫との事。

海苔の佃煮と、チューブタイプの梅と、これまたチューブタイプのかける味噌を持って行った。

これ持ってきたよ。
これでご飯食べないよ。

義母は、嬉しそうに笑った。
声は出ないけれど、私の名前を呼んだ。

一口だけ、スプーンの先に、ほんの少し味噌をつけて舐めさせた。

本当に嬉しそうに、本当に美味しそうに。

義母は笑った。

昨日は何の日だったかわかる?
3月9日。

孫の名前を言い誕生日と答えた。
電話しようと思っちょったに。

ユンギと同じ誕生日なのですよ。

お腹に力が入らないせいか、小さな声しか出せないけれど、会話もできるし、ボケてもいない。

なんだか、無性に腹が立ってきた。
今までをずっと見てきていない人が、ボケが進行しただのなんだの。

動けないのはパーキンソン病のせいもあるのに。

それでも、もう一口食べたいと笑う義母を見て、穏やかな気持ちが戻った。

食欲が戻りますように。
看護師さんがちゃんと食事の時に、海苔の佃煮とか出してくれますように。

延命ではなく、救命。

早く施設に戻れますように。

そして、車椅子で我が家に日帰りできる日を、心から望んでいる義母の願いが叶いますように。

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