最近引っ越してきたお隣さんは、転校生のクーデレ令嬢だった。 プロローグ

「――今日は転校生を紹介する」

 担任の小野先生が紹介し教室に女の子が入ってきた瞬間、男子がザワザワしだした。
 まぁ無理もないかもしれない。
 なぜなら転校生はS級クラスの美少女だったから。

「実川紗希《みかわさき》です。よろしくお願いします」

 長くてサラサラな髪を靡《なび》かせて彼女は頭をペコリと下げた。
 大きく綺麗な瞳に長くてくるんとしたまつげ。
 爽やかな顔立ちで適度な笑みを浮かべる彼女はまるでクールな天使のよう。

 スカートが短いから、すらりと長い足が強調され160センチないくらいの身長でもスタイルが良く見える。
 まさに非の打ち所がないクール美少女だった。

「じゃぁ、実川さんはあそこの席に座ろうか」
「はい」
「わからないことがあったら綾瀬《あやせ》に聞くといいから」

 そう言い小野先生が指差したのは後ろの角にある俺の隣の席。
 彼女は席に座り俺の方を静かな目で見る。

「……よろしくお願いします」

 彼女の目は先程の笑みも感じさせないくらい冷たいものだった。

           ◆

 休み時間が始まって沢山の男女が実川さんの席を囲む。
 そして俺は男子から冷たい眼差しを受けていた。
 俺の時とは違い、実川さんは笑顔で皆に接している。

 別に辛くもなかったけど少し不思議に思った。

           ◆

 ――放課後になり俺は一人暮らしをしているアパートに帰った。
 部屋も小さくて学校からは少し遠いけどまだ新しく綺麗で家賃も安いアパート。
 高校入学と同時に実家から移り住んでからもう五ヶ月くらい経つ。
 この生活にもだいぶ馴染んできた。
 まず風呂に入ってからテレビの電源を付けてソファーにもたれかかった俺は家のドアをノックする音に気づき玄関に向かった。
 鍵を回しドアを開けるとそこには、驚いた様子の転校生クール美少女が立っていた。
 驚きのあまり言葉を失う二人。

「……隣に引っ越してきた実川です。挨拶に伺いました」
「あ、はい。綾瀬です、よろしくお願いします」

 そこはちゃんと形から入るんだ……
 そういえば隣に誰か引っ越してくるって管理人さんが言ってたっけ。

「ここは綾瀬君の家《うち》?」

「はい、一人暮らしなんですけどね」

 俺がそういうと実川さんは玄関の外に出て落ち着いた様子で、

『これも何かの縁なのかも』と言って深々と頭を下げて帰って行った。

 彼女の表情は学校で見せた無表情とは違い温かいものだった。


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