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好きなものはいつまでも「好き」と言いたい

タピオカミルクティー。

中学生くらいの頃から存在は知っていた。コンビニのチルドカップコーナーのすみにひっそりと佇み、黒い数珠状の物体がいくつも沈澱したその姿は当時の私の目には異様な光景として映っていた。ミルクティーは好きだったけれど、新しいものよりも親しみ深いものが好きだったので当然手は出さなかったし、そもそもそこまで興味もなかった。

初めてちゃんと飲んだのは、大学の学校祭の出店。同期の友達が茹でたタピオカを午後の紅茶のミルクティーに注いだものだったと思う。

「意外と美味しいかも?」

そのあとチルドカップのタピオカミルクティーも飲むようになったが、そこに入っているのはタピオカ風のゼリーみたいなもので、本物のタピオカでは無いことも知った。本物の(?)タピオカを飲むのは学校祭の時くらいだったと思う。

そんな私に転機が訪れたのは、台湾旅行中のことだった。
観光で、千と千尋の神隠しの油屋のモデル(実際は似ているだけでモデルになった訳では無いらしいが)と言われている茶屋がある九份を訪れていた。色々なお店がひしめく中に、タピオカミルクティーを売っているお店を見つけた。

「そういえば台湾はタピオカミルクティーが有名だったっけ?」

というわけでスタンダードなタピオカミルクティーを注文。甘さや氷の量など、細かく注文することが出来た。日本円で200~300円くらいなのに、500ml近いたっぷりの量のドリンクが手渡されて驚いた。
1口啜ってみる。

「え、おいしい…!」

これがわたしのタピオカミルクティーとの真の出会いだったといっても過言ではない。
1粒1粒が大きくてもちもちしたタピオカと、まろやかで上品な味のミルクティーの組み合わせが美味しくて、今までのタピオカドリンクは何だったんだと思ってしまうほどだった。
その日を境に、滞在中は毎日、違う店舗でタピオカミルクティーを注文した。

帰国後も禁断症状が出そうになるくらい、タピオカが頭から離れなくなった。当時はまだタピオカブームの手前くらいだったし、近所にタピオカスタンドは無かった。
「またあれが飲みたい…」
そう思いながら、チルドカップの偽タピオカドリンクを啜ってなんとか禁断症状を抑えた。

それから1年くらい経った頃、日本にタピオカブームが到来した。近所にはまだスタンドはなかったし、値段も現地より高めだったけど、都会に出向いた時に注文して、久しぶりに飲めた時の感動は凄まじかった。

今やブームはすっかり落ち着き、休日でも行列はあまり見かけなくなった。でも、わたしは流行り廃りとか関係なく、台湾で運命的な出会いを果たしたあの日から、タピオカミルクティーが好きなのだ。
だから飲む。また台湾行きたいなあとか思いを馳せつつ、1粒1粒の食感とお茶の味をゆっくり味わう。

流行ろうが廃れようが、自分が好きなものはいつまでも「好き」と言いたい。

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