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非日常への感謝。日常への感謝。【エンタメとコロナ】

非日常に踏み入ったら、日常へ帰るのに想像以上に苦戦した。というか、まだ苦戦している。

この時代には有難すぎる切符をもらった

ライブも舞台もイベントも飲み会も旅行もできなくなってしまった地球。この時代には信じられないくらい有難い、ある舞台への切符を手に入れた。この切符には二度驚いた。一度目は当たった時、「当たれ」の希望を持つことすら虚しくなるような確率、だったはずだ。相棒のおかげで奇跡が起きた。二度目は上演が決定した時、4月下旬からの緊急事態宣言に係りGW前後の全公演が中止になっていたから、それ以降は未定だったものの、ほぼ諦めていた。前世でどれだけ徳を積んだのか、5月12日以降の公演再開が決まった。

弾丸東京ツアー

留学から帰って1年と9か月ぶりを経た相棒との再会、1泊する予定だった。4月から感染がまた(また)拡大し、緊急事態宣言が発令された。県境を越えて会う人と宿泊、しない方が良いことは明白だったけど、終わりの見えないコロナトンネルへのストレスみたいな苛立ちみたいなものから、強行突破しようかと思った。それでも私は大抵、リスクの低い方を選択する。今回ばかりは功を奏した。悔しいし嫌だけど、仕方がない。こればっかりは仕方がない。3時間新幹線に乗って、6時間滞在して、また3時間新幹線に乗って帰った。目が回りそうだった。舞台で憧れの人を初めて生で見るという夢心地を、この弾丸スケジューリングが後押しした。何が何だかわからないまま、お昼に出たこの部屋に深夜帰宅した。身体は疲れ切っているのに全然眠れなかった。

翌日の虚無感

アラームをかけずに寝たものの、10時に目が覚めた。普段は一人暮らしの寂しさを感じたくなくて、常にテレビでYouTubeをつけている私が、この日ばかりは音がしないのが心地よかった。外はジメジメ、雨が降ったり止んだりの曇りで、自然のざわざわ音と鳥が鳴いてる、いつもは物足りなく感じるナチュラルBGMが丁度よく十分だった。どれもこれも、前日の夢みたいな世界から抜け出したくなかったから、"いつもの"世界にまだ戻りたくなかったから、だろう。奇跡のような切符に、きっと中止に違いにないと諦めた環境、そして目まぐるしい移動スケジュール、初めて彼らに会う実感を持たせない条件が揃いに揃っていた。案の定、上演後に会場を出てもなお、よくわからなかった。舞台の真っ最中ですら夢のような世界を信じ切れず、実感がわかず、何が何だかよくわからなかった。初めて「実感がわいてきた」と思ったのは、身体疲労が一気にきて急激に眠くなった帰りの新幹線だった。さらに「実感がわいた」と思ったのは、ハードな飲み会で騒ぎまくった翌朝のような疲労感で目覚めた翌朝。机の上には舞台の半券。んんんんん、夢じゃなかったみたいだ。余韻に浸って多幸感と言いたいところが、もはや病人のような倦怠感。なんじゃこりゃ。この日は1時間だけ作業できればはなまるという目標を立てていたが、それどころじゃなかった。ベッドから抜け出してパジャマから着替えるのが18時になってしまうくらいだった。行き慣れたスーパーに足を運ぶことが苦しいほどだった。なんじゃこりゃ。何としてでも現実世界にまだ戻りたくないんじゃん。「信じられない」「嘘みたい」と思いつつ、この非日常空間とその余韻にいつの間にかしがみついていたみたい。

日常があるから非日常がある

好きなアーティストのライブ、でっかいフェス、ずっと楽しみにしていた舞台、エンタメにはいろんな形がある。国内旅行だって、海外旅行だって、高校の体育祭だって、部活最後の大会だって、ある。何が大切かは人によるけど、誰かにとって大切な非日常はこんな風に沢山ある。人が集うことがことごとく叶わなくなってしまったこの世界。嫌んなっちゃうよな!でも仕方ないのよな。私は本当に本当に有難いことにこのタイミングで生のエンタメに触れさせてもらえたから、こういう非日常のエンタメが、冗談抜きに生き甲斐になるなと改めて思った。日常が好ましくなくても、非日常のこの瞬間のためなら頑張れる人が数多といる、なんてすごいんだと驚愕した。エンタメが見る人にその瞬間与えるパワーだけでなくて、さらにその裏にある"そのためなら頑張ろうと思わせる強大なパワー"が、今まで以上に輝いて感じた。

身近で感染してすごく体調を崩した人とかはおらず、ましてや命を落とした人もおらず、仕事がなくなって生活に困っているとかもなく、娯楽が奪われることにあーだこーだ文句言える私は、まだ有難い。

僕達は命の危険以外のことで、今悲しめてる。それは本当は当たり前じゃなくて、すごく幸せなことで。

と、舞台に立っていた彼らの一人が以前言うていました。綺麗な心の持ち主だなと思った。「コロナなんてそんなときもあったね、懐かしいね」と笑い話にできるような未来がくるまで、絶対に忘れないようにしようと思った。私が舞台に入れたのも、新幹線に乗れたのも、非日常を体験するための日常を作ってくれている人がいるからで。ありがとうございます。今日もお疲れ様です、ありがとうございます、日本中各位。舞台は思っていたより空席が目立った。行きたい人の数と行ける人の数がどう頑張っても見合わないこのイベント、売れなかったから空いているなんて訳がなく、きっと東京の感染状況を鑑みて泣く泣く諦めた人や感染者や濃厚接触者に該当して泣く泣く諦めた人が、来るはずだった席だろう。なんかもうそれだけで辛くなってしまう、行けた私すらが。しかし、何卒、命の危険以外で悲しめている私がすべきは、同情ではなくありがとうだと思う。休みなく戦っている政治家も、総理大臣も都知事も県知事も、飲食業も、観光業も、我慢してお家にいる全ての人も、そして医療従事者の皆さまも、ありがとうございます。

エンタメが決して、コロナに負けませんように。

"今度は必ず みんなで歌おうよ 笑顔で会えるよ その時まで" 🌸



エンタメの力強さに触れた感動と、依然として日常がある有難みに触れて、二度と現実に戻れないんじゃないかってほど心が揺れたので、言葉にしなければならないと耐えられなくなった。珍しく、誰に何を伝えたいのかハッキリしないまま書き綴っている、心境ありのままそのまま正直日記。涙が出そう

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