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かわいくない王子とかわいい王子、サン・テグジュペリ『星の王子さま』

この記事を開かれた方は、サン・テグジュペリ『星の王子さま』をすでに読んでいるでしょう。わたしも何度か読み直しています。読み直すたびに、新しい翻訳を選んでおり、いくつ『星の王子さま』を持っているのかよくわかりません。日本ほどに多様なサン・テグジュペリ『星の王子さま』に溢れている現象は、原書のフランス語圏以上かもしれません。

今回の読み返しでは、フランスで出された『星の王子さま』別バージョンを選んでみました。

ところで、サン・テグジュペリ『星の王子さま』の魅力は、挿絵の「星の王子さま」にあるんじゃないかと思えるのです。

「星の王子さま」のグッズを持っていた知人に、『星の王子さま』の内容に関しての印象を尋ねてみると、少し口が重たい。知人は、小説作者のサン・テグジュペリによる挿絵・イラストに惹かれているだけだったのでしょうか。深く詮索をしませんでした。

挿絵の「星の王子さま」は確かにカワイイ。

さて、今回読み直したバンド・デシネ版は、
ぱっと見、王子さまがかわいくないんです。


しかし、これはこれで「王子さま」フィルターを作用させずに済みます。

バンド・デシネ(スファール)版『星の王子さま』は、原作に忠実にストーリーが展開されます。原作への脚色は少なくともストーリーにはありません。しかし、バンド・デシネなので、絵で「逸脱」を忍ばせることはできます。スファールさんが『星の王子さま』から感じたイメージを「逸脱」から読み取ることができます。

わたしは、小説『星の王子さま』を読んだ際に、バラに関してそれほどの強い注意を払っていませんでした。バンド・デシネ(スファール)版を読んだ後では、バラへの印象が一転します。わたしの小説の読みは浅はかでした。

バンド・デシネ(スファール)版を読み進めると、徐々に「王子さま」に愛着を持ち始め、ついには「帰らないで!」となってしまいます。これも、スファールさんの絵柄の不思議な魅力なのです。

いくつ翻訳を読み重ねても、得られない『星の王子さま』体験でした。絵に騙されてはいけませんね。

つぎはコチラ。『リトルプリンス 星の王子さまと私』原題 "Le Petit Prince"(IMDbへ飛びます)です。

リトルプリンス 星の王子さまと私

IMDbでは 7.7 スコアと非常に高評価な映画です。仏伊協力で2015年に作れらました。Wikipediaの記事によれば、フランスでは「自国の興行収入ランキングで2位を記録」とあり、ヒットしていたようです。日本では全然話題になりませんでした。

わたしはいい作品だと思います。

この映画は、純粋な『星の王子さま』ではありません。作中劇として『星の王子さま』が繰り広げられます。これまで、『星の王子さま』は何度か映像化されています。この映画の『星の王子さま』部分は現時点では最高峰の出来だと感じます。まさにサン・テグジュペリのイラストが3Dで動いています。CGっぽさのないストップモーション・アニメーションなのがいいです。

この「王子さま」はかわいいです。むしろ、キツネがかわいい。

映画では、「王子さま?」な人も途中から出てきます。その「王子さま?」を含めて、後半の流れは好みが分かれそう。商業化するには、こういった要素が必要なのでしょう。

ところで、邦画化されると、なぜココまで質が落ちてしまうのでしょうか。
観られる際は、字幕版を強く推奨します。日本語版は余計な要素が加えられ、感動が激減します。

最後に

最近、バンド・デシネやグラフィック・ノベルを数冊読みました。翻訳までされる作品ですので、読み応えがあり、日本のマンガにない魅力がありますね。今後、紹介していきたいです。

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