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シン・ウルトラマンの物理学-グダグダなブレーンと超ひも理論、量子もつれ

そのガジェットを出す必要あったの?

『シン・ウルトラマン』にこのような危うさをありました。わたしはウルトラマンにそれほど思い入れがありません。もしかして過去作へのオマージュが込められていたのかもしれません。

"シン・ウルトラマンの物理学"が、日経サイエンス(非専門家向け科学雑誌です) 2022年10月号に特集されていたので、記事を読みました。

  1. 高次元宇宙「プランクブレーン」とは何か  中島林彦 (協力:橋本幸士)

  2. 超重元素「スペシウム133」研究序説 中島林彦 (協力:延與秀人,羽場宏光,森本幸司)

※日経サイエンスは都道府県レベルの図書館ならば置いていると思います。また、記事だけをDL購入できるらしいです。

物理学を解説されても、ストーリーとガジェットが噛み合っていない、バランスの悪さが際立つんです。

巨大化して格闘する。ブランクブレーンをどうのこうのと制御できる、科学的にも精神的にも高度な存在にとって、その手段は矛盾していませんか?

もっとメンタル面での戦略を取るのではないでしょうか。

ウルトラマン世界の科学力の出しどころは、精神や心、思考といったバイオ寄りな分野ではないのかなって。

ともかく、『シン・ウルトラマン』では物理学の最先端のタームをガジェットとして使い、「らしさ」を色付けしました。

しかし、その「らしさ」が脆いため、どこか科学考証までもが嘘っぽく感じてしまいます。

ちがう、超ひも理論は人類の希望なのかもしれないのに。

わたしは博士前期課程で理論物理学を学びましたけれど、超ひも理論は未修です。ノーベル物理学賞の小林誠先生の集中講義を受けたことがありますけど、入り口あたりでわたしは頓挫しました。

超ひも理論はものすごく難しい。

でも、それ以前に、通常の理論物理学の学ぶ順序では、超ひも理論を学ぶまでに至らない。

究極理論への道のりは、つぎのようにレールが敷かれています。
①量子力学

②場の量子論(量子場の理論)
   ※通俗書では「場の量子論」は「標準理論」と表現されています。

③超ひも理論

量子力学は、物理学科 学部でそれなりにマスターできます。
場の量子論では、物理学科大学院生の95/100が挫折します。物理学科の大学院生は、1つの大学で100人もいないので、大学によっては全滅します。

有名なヨビノリさんも挫折組だと思います。
本棚には「場の量子論」本がありますが、動画に"場の量子論"ネタが皆無です。

「宇宙女子」加藤シルビア,黒田有彩(いずれもお茶の水女子大学理学部物理学科卒)
この本でも「場の量子論って難しすぎ」と書かれてました。場の量子論はそもそも学部では手に負えません。

95/100からの残った5人も、博士後期課程で超ひも理論の分野で業績を残せる段階に到達するのだろうか。数年に一人くらいしかいない?

実際、超ひも理論はとてもマイナー研究分野です。超ひも理論を専門とする物理学者は、1/100、多くて2~3/100程度です。大栗先生の超弦理論入門(ブルーバックス) の著者 大栗博司先生は有名な超弦理論専門家です。

それだけマイナーなため、超ひも理論の専門書(和書)はほとんどありません。

雑誌 ニュートンなどで「粒子はひもになっていて、開いたひも、閉じたひもがあって~」と説明されてます。そのような言葉だけの説明だけでなく、実際はどのような理論なのか、専門書をチラ見してみませんか。

たとえば、次の書籍です。※海外書籍、その翻訳書を除いています。

  1. Dブレーン 橋本幸士

  2. 弦とブレーン 細道和夫

  3. 究極理論への道: 力・時空・物質の起源を求めて 米谷民明

  4. 共形場理論入門 基礎からホログラフィへの道 (KS物理専門書) 疋田泰章

  5. 超弦理論・ブレイン・M理論 (現代理論物理学シリーズ 1) 太田信義

  6. 量子エンタングルメントから創発する宇宙 高柳匡

6は、2022年 ノーベル物理学賞「量子もつれ(量子エンタングルメント)」(のもっともっと先)に関係しています。「量子の謎」は量子力学では解けなくて、超ひも理論(ホログラフィック理論)で解かれるかもしれないという内容です。量子もつれの解説動画は、2022年ノーベル賞にあやかり、たくさんあります。

ヨビノリさんも動画をアップされています。しかし、ホログラフィック理論まで解説していません。ホログラフィック理論の関連リンクを貼っておきます。

  1. 量子もつれが時空を形成する仕組みを解明~重力を含む究極の統一理論への新しい視点~(カブリ数物連携宇宙研究機構)

  2. 高柳匡「量子情報と重力理論」、量子情報春の学校2021、2021年3月28日

    • ※ Google DriveのPDFが開きます。

マルチバースについても書きたかったのですが、ひも理論で終わってしまった。次回書きまーす。

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