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好きな作品から短歌を作ってみよう #推し短歌

noteで「推し短歌」の募集企画がスタートしています。

「自分の好きなアイドルやアニメ、音楽、趣味の時間など、推し(好きなひと、もの、こと)についての短歌ならなんでもOK!」というこの企画。短歌を読み、詠むことが盛り上がっているのを実感できて嬉しいです。今回短歌の選考委員を務めさせていただくことになったのですが、私自身、よく「好きなもの、こと」から短歌をつくっています。

今日は「好きなひと、もの、こと」などからインスパイアされて作った私の短歌をいくつかご紹介します。

女の園の星

犬たちも持つ社交性 タピオカと呼ばれセツコはゆっくり起きる

「光るバズーカ」

和山やま先生の漫画『女の園の星』(祥伝社)をイメージしてつくった短歌です。これは2話の「クラス犬」の回。本当はセツコという名前なのに、女子高生たちにタピオカと命名されてかわいがられるセツコ。渋々、でもまんざらでもない様子で人間に付き合う犬の愛しさを歌にしました。


チェンソーマン

無知だったことを知ったら無知だったころの幸せ なんか、なんかさ

シケモクを集めてつなぐ 糞映画見飽きた頃に出会えるシーン

「シネマ・パラダイス」

『チェンソーマン』の主人公、デンジをイメージして作った短歌です。
1首目は第一部の後半、2首目は第二部から。作者の藤本タツキ先生は映画好きで、作中に映画のモチーフがたくさん出てきます。「シケモクを集めてつなぐ」は第二部のデンジの行動が基準になっていますが、私の好きな映画『ニュー・シネマ・パラダイス』のことも意識して作りました。


THE FIRST SLAM DUNK

駒が成るように不敵は空中で瞬くように無敵に変わる

「心臓」

『THE FIRST SLAM DUNK』の桜木花道をイメージしてつくった短歌です。
私は漫画『SLAM DUNK』を読んだことがなく、映画で見る桜木が初めて出会う桜木でした。バスケの初心者であるはずの桜木が、山王戦の試合中にめきめきと強くなっていく姿。観客を煽るパフォーマンスをしたり、勝利宣言をしたり、破天荒な行動で注目を集めますが、そんな彼が試合中に圧倒的なプレーを見せる様子を、将棋の駒が「成る」ことに喩えました。


PUI PUI モルカー

好きすぎるあまり、その作品世界に自分がいるとしたら……という妄想をすることもあります。

神妙な顔して聞いてくれるけど鳴き声はぷい夜のドライブ

行けなんて言ってないのに海に来てそんなに得意げに鳴かないで

「きみは自由」

車がモルモットだったら……?というキュートな世界を表現したストップモーションアニメ『PUI PUI モルカー』。とにかくモルカーがかわいい!好き!という気持ちから、モルカーと一緒に暮らす自分の毎日を想像してみました。自動車と違って、意志を持つモルカーは、私達の生活にいろんなサプライズをもたらしてくれそうです。

他にも、散歩中にすれ違う犬との出会いを描いた「四季と犬」という連作や、『スキップとローファー』の志摩聡介視点の連作「ステップ」など、好きなものごとや作品、キャラクターからたくさんの短歌をつくっています。

「短歌を作ってみたい!」と思ったら

難しく考えず、気軽にチャレンジしてみてほしいです!
私はこの3ステップで短歌を作り上げていきます。

  1. まずは思いつくことをなんでも書き出してみる

  2. 「5・7・5・7・7」の形にしてみる

  3. 理想に近づくように、推敲!

1.まずは思いつくことをなんでも書き出してみる
好きなものごとを短歌にする上で大事なのは「どこが好きなのか」「どんなところが魅力的なのか」を整理してみることだと思います。いきなり5・7・5・7・7の形に当てはめてもOKですが、「何が言いたかったんだっけ……?」と迷子になってしまうこともあるので、自分が知っている推しの魅力を様々な角度から見つめ、整理してみてください。そのメモそのものが歌になったり、推敲の手助けになったりするのでオススメです。

2.「5・7・5・7・7」の形にしてみる
短歌は「5・7・5・7・7」の形で、季語は不要です。短歌を初めて作る方は、5と7の間に空白を入れたり、改行をされたりすることが多いですが、この記事で紹介した短歌のように、そういった空白や改行はいりません。意味上の区切りをつけたかったり、間を持たせるような効果をつけたかったりする際に「一字空け」を試してみてください。

3.理想に近づくように、推敲!
完成した短歌はそのままにしておかず、ぜひ、少し時間を置いてから見直して見てください!時間が経つと冷静な目を持てるので、作ったときには気づかなかった粗が見えたり、改善ポイントが見えてきます。
「歌の形にはなったけど、なんだかピンとこない……」というときは、「カメラの位置を変える」ことを試してみてください。
視点をマクロからミクロに変えてみる、話者を第三者に変えてみる、ヒトではなくモノを主語にしてみる、など、映像を切り取るカメラの位置を変更してみると、新たな角度から歌を描写できます。


短歌は読み、詠むうちにどんどん上達していく創作だと私は信じています。
これまで歌を作ったことがないという方も、この機会にぜひチャレンジしてみてください!



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この文章は、noteが開催する「#推し短歌」の参考作品として主催者の依頼により書いたものです。

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読んでくださってありがとうございます!