2023 『2週間で小説を書く!』実践演習 その8(人称を変える)
清水吉典氏の『2週間で小説を書く!』の実践練習のお題をひとつずつやっていくノートです。 お題が14日分(二週間分)あります。
実践練習の順番はバラバラです。
【実践練習第5日】人称を変える
例文
ホームセンターの観葉植物の棚にセール品の植物たちが並んでいた。すこし葉に元気がなかったり、徒長してひょろ長くなった子たちを眺めていると、ペットショップの売れ残った子犬みたいだと思う。
私はペットショップのケージの前で迷うように、セール品の植物を家へ連れて帰るべきだろうかと考える。でも家のベランダは私がすこしずつ揃えてきた鉢植えたちで満杯で、この子たちを置くスペースがない。
人間の都合で見栄えが悪くなった植物たちが、値打ちを下げられ売られていく。廃棄品となって捨てられていく植物の未来を想像すると、私はすこし罪悪感を覚えた。
ある画家が、人間の姿がない自然が本来の楽園であったと語っていた。そうかもしれない。人間の手が入らない自然は、歪め、たわめられ、形を整えられることもなく美しく栄えていくのかもしれない。
私はセール品の一番手前にあった鉢を取り、レジで支払いを終えた。
私たちは楽園から遠く離れてしまったのだ。手提げ袋のなかで小さな鉢がカサカサ鳴る。
私は私のワンルームマンションのベランダに、ささやかな人工楽園を作っていく。
私→彼女に変換
ホームセンターの観葉植物の棚にセール品の植物たちが並んでいた。すこし葉に元気がなかったり、徒長してひょろ長くなった子たちを眺めていると、ペットショップの売れ残った子犬みたいだと思う。
彼女はペットショップのケージの前で迷うように、セール品の植物を家へ連れて帰るべきだろうかと考える。でも家のベランダは彼女がすこしずつ揃えてきた鉢植えたちで満杯で、この子たちを置くスペースがない。
人間の都合で見栄えが悪くなった植物たちが、値打ちを下げられ売られていく。廃棄品となって捨てられていく植物の未来を想像すると、彼女はすこし罪悪感を覚えた。
ある画家が、人間の姿がない自然が本来の楽園であったと語っていた。そうかもしれない。人間の手が入らない自然は、歪め、たわめられ、形を整えられることもなく美しく栄えていくのかもしれない。
彼女はセール品の一番手前にあった鉢を取り、レジで支払いを終えた。
彼女たちは楽園から遠く離れてしまったのだ。手提げ袋のなかで小さな鉢がカサカサ鳴る。
彼女は彼女のワンルームマンションのベランダに、ささやかな人工楽園を作っていく。
私→彼女に変換
彼女はホームセンターの観葉植物の棚にセール品の植物たちが並んでいるのを見かけた。すこし葉に元気がなかったり、徒長してひょろ長くなった鉢植えを見た彼女は、ペットショップの売れ残った子犬と同じだと思う。
彼女はペットショップのケージの前で迷うように、セール品の植物を家へ連れて帰るべきだろうかと考える。しかし彼女の家のベランダはすこしずつ揃えてきた鉢植えたちで満杯で、売れ残った植物を置くスペースがない。
人間の都合で見栄えが悪くなった植物たちが、値打ちを下げられ売られていく。廃棄品となって捨てられていく植物の未来を想像して、彼女はすこし罪悪感を覚えた。
ある画家が、人間の姿がない自然が本来の楽園であったと語っていた。そうかもしれない、と彼女は思う。人間の手が入らない自然は、歪め、たわめられ、形を整えられることもなく美しく栄えていくのかもしれない。
彼女はセール品の一番手前にあった鉢を取り、レジで支払いを終えた。
私たちは楽園から遠く離れてしまったのだ。彼女は心のなかで呟いた。手提げ袋のなかで小さな鉢がカサカサ鳴る。
彼女は彼女のワンルームマンションのベランダに、ささやかな人工楽園を作っていく。
彼女→私に戻す
私はホームセンターの観葉植物の棚にセール品の植物たちが並んでいるのを見かけた。すこし葉に元気がなかったり、徒長してひょろ長くなった鉢植えを見た私は、ペットショップの売れ残った子犬と同じだと思う。
私はペットショップのケージの前で迷うように、セール品の植物を家へ連れて帰るべきだろうかと考える。しかし私の家のベランダはすこしずつ揃えてきた鉢植えたちで満杯で、売れ残った植物を置くスペースがない。
人間の都合で見栄えが悪くなった植物たちが、値打ちを下げられ売られていく。廃棄品となって捨てられていく植物の未来を想像して、私はすこし罪悪感を覚えた。
ある画家が、人間の姿がない自然が本来の楽園であったと語っていた。そうかもしれない、と私は思う。人間の手が入らない自然は、歪め、たわめられ、形を整えられることもなく美しく栄えていくのかもしれない。
私はセール品の一番手前にあった鉢を取り、レジで支払いを終えた。
私たちは楽園から遠く離れてしまったのだ。彼女は心のなかで呟いた。手提げ袋のなかで小さな鉢がカサカサ鳴る。
私は私のワンルームマンションのベランダに、ささやかな人工楽園を作っていく。
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